リチウムイオン電池の充電制御の仕組み
リチウムイオン二次電池の充電では、できるだけ速く充電すると共に、安全に充電することが求められます。
本稿では、代表的なリチウムイオン電池の充電サイクルや直列接続時の充電の注意点について解説していきます。
代表的な充電サイクル
リチウムイオン電池の代表的な充電サイクルは、
- トリクル充電
- 急速充電
- 定電圧充電
- 充電完了(停止)
となります。
②と③の部分を合わせて、CCCV充電と呼ばれます。
充電完了後、放電により一定以下まで電圧が下がると再び充電サイクルが開始します。
各充電サイクルの詳細について解説していきます。
トリクル充電
トリクル充電とは、小さな電流で充電する方法です。
元々は二次電池の自然放電による容量低下を防ぐために、それを補うように継ぎ足し充電をすることを指していましたが、リチウムイオン電池では終止電圧を超えるまで小さな電流で充電することを指します。
終止電圧以下の過放電状態では、劣化を招きやすく大きな電流で充電するのは危険です。
そのため、終止電圧より少し高い電圧まで充電されるまでは、0.1Cなどの小さな電流で充電するように指定されています。
このCという単位はCレートと呼ばれ、1時間で満充電まで充電できる電流を1Cとして定義されています。
例えば、1000mAhの容量の電池であれば、1C=1000mAとなります。
CCCV充電
CCCV充電とは、定電流定電圧充電(Constant Current-Constant Voltage)のことで、電池の電圧が低い領域では定電流で充電し、最大電圧に近づくと定電圧での充電に切り替え、充電電流を徐々に減らしていく充電方法です。
トリクル充電で終止電圧以上の電圧まで充電されると、大きな電流による急速充電が可能となり、定電流充電(CC充電)へ移行します。
1Cの電流で充電されることも多いため、1C充電と呼ばれることもあります。
急速充電により電池の電圧が設定した最大電圧にまで到達すると、定電圧充電(CV充電)に切り替わります。
充電電流は徐々に低下していき、設定した最小電流に到達すると充電が完了となります。
充電完了となる電流値は、0.1Cに設定されている場合が多いでしょう。
直列接続時の充電の注意点
電池のばらつき(容量、内部抵抗、自己放電率、劣化状態)によって、同じ電流で充放電しても充電完了までの時間や終止電圧に達する時間が変わります。
そのため、二次電池を直列に接続した場合、最も容量が小さいセルによって全体の特性が決まってしまいます。
1つのセルが先に充電完了電圧に達すると、他のセルの充電が完了していなくても充電を止めなければなりません。
充電を続ければ、充電が速いセルが過充電状態となってしまうためです。
逆に放電時は、1つのセルが終止電圧に達すれば放電を停止させる必要があります。
放電を続ければ、電圧低下の速いセルが過放電状態となってしまうからです。
つまり、セルのばらつきが生じることで、電池の特性を十分活かしきれないことになります。
この問題を解決するために、「セルバランス」を取る必要があります。
セルバランスとは
セルバランスとは、直列に接続された二次電池の各セル間の充電状態を均一にし、全ての電池セルの容量を使い切れるようにすることを言います。
この「充電状態」のことをSoC(State of Charge)と呼び、セルの容量に対する電荷の残量の割合として計測され、バランスを取るために使われます。
セルバランシングICを使って、SoCの高いセルから電荷を放電することでセルバランス崩れを整えることができます。
セルバランス補正回路には、パッシブバランシングとアクティブバランシングの2つの方式があります。
パッシブセルバランシング
パッシブセルバランシングは、SoCの高いセルの電荷をMOSFETなどのスイッチで放電してSoCを均一にすることで、全てのセルを完全に充電させることができます。
ただし、余剰電力分を捨てることになるので、システムの電力損失が大きくなってしまうというデメリットがあります。
アクティブセルバランシング
アクティブセルバランシングは、余剰電力を回生させ、上流側に戻して再分配することで効率を高めることができます。
パッシブセルバランシングの問題を解決できますが、システムが複雑となり、コストもアップするのがデメリットです。