サレンキー型2次フィルタの特性と設計計算

サレンキー型2次フィルタ

サレンキー(Sallen-Key)型フィルタとは、VCVS型(電圧制御電圧源型)アクティブフィルタを構成する方法です。

本稿では、サレンキー型の2次ローパスフィルタ、ハイパスフィルタの設計方法や特性について解説していきます。

2次ローパスフィルタ(LPF)

サレンキー型の2次ローパスフィルタはこのような回路です。

サレンキー型2次ローパスフィルタ

伝達関数、カットオフ周波数、Q値は以下の式で表されます。

サレンキー型2次フィルタ伝達関数
サレンキー型2次フィルタカットオフ周波数
サレンキー型2次フィルタQ値

設計計算

計算を簡単にするため、R1=R2=Rとすると、

サレンキー型フィルタ計算

となります。
カットオフ周波数fcに√C1を代入すると、

サレンキー型フィルタ計算

これより、C1、C2を求めると、

サレンキー型フィルタ計算

となり、カットオフ周波数とQ値を決めればC1、C2の値を計算できます。

例えば、R1=R2=10kΩ、Q値を1とすれば、

C1=31.8nF、C2=8.0nFと計算できます。

周波数特性

下図の回路で、R1=R2=10kΩ、カットオフ周波数=1kHzとして、Q値を振った場合の周波数特性をLTspiceで確認してみます。

サレンキー型ローパスフィルタシミュレーション回路 サレンキー型ローパスフィルタ周波数特性

減衰特性は-40dB/decadeとなっていることが分かります。

増幅する場合

先述の回路ではオペアンプがボルテージフォロワ型になっているため、増幅作用はありません。

ボルテージフォロワとは?オペアンプを使ったバッファ回路

下図のように非反転増幅型にすることで、増幅することができます。

サレンキー型ローパスフィルタ増幅回路

増幅率は、

増幅率

で計算できます。
下図の条件でシミューレーションを行うと、カットオフ周波数以下ではゲインが20dB(10倍)となっていることが分かります。

サレンキー増幅回路 サレンキー増幅回路周波数特性

2次ハイパスフィルタ(HPF)

サレンキー型の2次ハイパスフィルタはこのような回路です。

サレンキー型2次ハイパスフィルタ

伝達関数、カットオフ周波数、Q値は以下の式で表されます。

伝達関数、カットオフ周波数、Q値

設計計算

計算を簡単にするため、C1=C2=Cとすると、

サレンキー型フィルタ計算

となります。
カットオフ周波数fcに√R2を代入すると、

サレンキー型フィルタ計算

これより、R1、R2を求めると、

サレンキー型フィルタ計算

となり、カットオフ周波数とQ値を決めればR1、R2の値を計算できます。

例えば、C1=C2=10nF、Q値を1とすれば、

R1=8kΩ、R2=32kΩと計算できます。

周波数特性

下図の回路で、C1=C2=10nF、カットオフ周波数=1kHzとして、Q値を振った場合の周波数特性をLTspiceで確認してみます。

サレンキー型2次HPFシミュレーション回路
サレンキー型2次HPFシミュレーション

減衰特性は-40dB/decadeとなっていることが分かります。

増幅する場合

ローパスフィルタの場合と同様に、非反転増幅型にすることで増幅することができます。
下図の回路でシミュレーションを行います。

サレンキー型2次HPFシミュレーション回路

カットオフ周波数以上ではゲインが20dB(10倍)となっていることが分かります。

サレンキー増幅回路周波数特性
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