能動負荷(アクティブ・ロード)とは?回路と特性について解説

能動負荷

能動負荷とは、電流が一定である非線形抵抗回路で、能動素子(トランジスタ)を使って構成されます。
アクティブ・ロードとも呼ばれます。
抵抗のような受動素子(パッシブ・ロード)との大きな違いは、インピーダンスが非常に大きい(理想的には無限大)であることです。

代表的な回路例としては定電流源やカレントミラーが挙げられます。

本稿では、能動負荷の特性と使用するメリットなどを解説していきます。

代表的な回路

能動負荷の代表的な回路には、次のような定電流源やカレントミラーがあります。

カレントミラーと電流源回路

アクティブ・ロードの特性

エミッタ接地回路

左が抵抗負荷で右が能動負荷です。
横軸をベース電流として、それぞれのコレクタ電流と出力電圧の関係を見てみましょう。

抵抗負荷と能動負荷の違い

抵抗負荷の場合、コレクタ電流に比例して出力電圧:Vo1が低下していきますが、能動負荷の場合はコレクタ電流が能動負荷の電流に達したところで一気に電圧が低下します。

したがって、能動負荷はコンパレータの出力段などに使うことで、急峻な電圧の切り替わりを得られるというメリットがあります。

コンパレータの設計方法

増幅率の違い

能動負荷はインピーダンスが非常に高いため、増幅回路で使うことで増幅率を高くすることができます。

エミッタ接地の場合で考えると、増幅率は

増幅率

で計算できます。
Gmはトランジスタのトランスコンダクタンス、ZLが負荷のインピーダンスです。

インピーダンスが高いほど増幅率が高くなることが分かります。

差動増幅回路の出力にカレントミラー(アクティブ・ロード)が用いられることが多いのは、増幅率を大きくするためです。

差動増幅回路の動作原理

動画で電子回路の基礎を学ぶ

Analogistaでは、電子回路の基礎から学習できるセミナー動画を作成しました。

電子の動きをアニメーションを使って解説したり、シミュレーションを使って回路動作を説明し、直感的に理解しやすい内容としています。

これから電子回路を学ぶ必要がある社会人の方、趣味で電子工作を始めたい方におすすめの講座になっています。

電子回路を動画で学ぶ

【内容】

  • 電気回路の基本法則
  • 回路シミュレータの使い方
  • コンデンサ・コイルとインピーダンス
  • フィルタ回路
  • 半導体部品の基礎
  • オペアンプの基礎
関連記事
トランジスタの飽和領域とは?飽和する原理を解説

本稿では、トランジスタの飽和について解説していきます。 バイポーラトランジスタを飽和状態で使用する際に起こる問題点と対策方法を紹介します。 また、バイポーラトランジスタの飽和とMOSFETの飽和の違いについても説明します。 INDEXバイポーラトランジスタの飽和とはなぜ飽和するの…

レベルシフト回路の必要性と動作原理

レベルシフト回路とは、クロックなどのデジタル信号のHiレベルを変換する回路です。 信号の出力側デバイスの電源電圧と受け側の電源電圧が異なる場合に、Hiレベルと電源電圧を合わせるために用いられます。 本稿では、レベルシフト回路の用途と回路例について解説していきます。 INDEXレベ…

定電流源回路の仕組みと設計方法

定電流源とは、負荷のインピーダンスに関係なく一定の電流を流し続ける回路です。 内部抵抗が大きい(理想的には無限大)ため、負荷の変動によって電圧が変動します。 本稿では定電流源の仕組みと回路例、設計方法をご紹介していきます。 INDEX定電流源の仕組み定電流源回路電圧電流変換回路フ…

負性抵抗の原理と回路例

負性抵抗とは、マイナスの抵抗値を持った素子、または回路で、印加する電圧が大きくなると電流が減少するという特性を持っています。 負性抵抗となる素子としては、トンネルダイオードやサイリスタがありますが、本稿ではオペアンプやトランジスタを使った能動的な回路の動作や用途について解説してい…

カレントミラー回路の動作原理と設計計算の方法

カレントミラーとは、電流源で作った基準電流をコピー(複製)する回路です。 電流を鏡のように写すことからその名が付けられています。 本稿では、カレントミラーの原理と、ミラー電流の計算方法について解説します。 INDEXカレントミラーの原理出力電流を2倍にする方法1.並列接続する2.…