PWM制御とは?仕組み、原理をわかりやすく解説
PWM制御とは、高速スイッチングによりパルス波形を生成し、パルスのHi時間を変化させることで、出力される平均電力を制御する方式です。
Pulse Width Modulationの略。
PWM制御が用いられるアプリケーションとして、モーター制御、LEDの調光、スイッチングレギュレータの電圧制御などが挙げられます。
本稿では、PWM制御の原理と、どのような動作をするかについてわかりやすく解説していきたいと思います。
PWM制御の基本原理
PWM制御は、方形波の周波数を固定し、電圧がHiの時間の割合を変えることで負荷にかかる電力を制御します。
方形波の一周期のうちのHiになっている時間の割合をDUTY(デューティ)と呼びます。
例えば、100kHz(周期が10us)の方形波で、Hiの期間が6usなら、DUTY比:Dは、
D = 6us / 10us = 60%
となります。
DUTY比を制御していることから、DUTY制御と呼ばれることもあります。
PWM信号を用いて、具体的にどのような制御をしているのか、実際のアプリケーションを3つ挙げて説明していきます。
モータのPWM制御
はじめに基本となるリニア制御(DC制御)について説明します。
リニア制御はモータを制御するための最も基本的な方式で、モータに印加する電圧を変えることで回転数を変化させます。
リニア制御は、下図のような回路です。
可変抵抗の値を変えることでモータにかかる電圧を変えることができます。
回路は単純ですが、モータに印加する電圧を低くするほどトランジスタのCE間電圧が広がるため、発生する損失、発熱が大きくなってしまうという問題があります。
この問題を解決したのがPWM制御です。
モータにかかる電圧は一定で、PWM信号でモータの下端のスイッチ(トランジスタ)のオン・オフを切り替えます。
制御用トランジスタはフルオンかフルオフしている状態で使うため、リニア制御に比べると損失がかなり小さくできます。
モータのインダクタンスを22uH、端子間抵抗を3Ω、印加電圧:VIN=3.7Vの条件でシミュレーションをしてみましょう。
モータに流れる電流波形は以下のようになります。
トランジスタのオン時にモータの電流が増加し、オフ時に電流が減少します。
オン・オフの比で釣り合ったところで平均電流が一定になります。
したがって、DUTYを大きくすると平均電流が増え、DUTYを小さくすると平均電流が減少します。
これにより、電圧が一定のままでも回転数を制御することができるのです。
モータと並列に接続されているダイオードは、スイッチがオフの期間のコイル電流を回生させる役割があります。
モータは誘導性負荷(コイル)なので、スイッチがオフになっても電流を流し続けようとします。
ダイオードがなければ、Hi-Zとなっているところに電流を無理やり流すため、トランジスタのコレクタ電圧が急激に上昇(大きな逆起電力が発生)し、トランジスタを破壊してしまいます。
ダイオードを設けることで、コレクタ電圧がVIN + VF まで上昇すると、ダイオードがオンして電流が回生するため逆起電力がクランプされてトランジスタを保護することができます。
LEDの調光
LEDの調光にも、流す電流を変えて明るさを変化させるリニア制御(DC調光、またはアナログ調光)と、電流は一定で電流を流す期間を制御するPWM調光があります。
下図がリニア制御回路です。
可変抵抗の値を変えることでトランジスタのエミッタ電圧が変化し、LEDに流れる電流を制御することができます。
こちらがPWM調光の回路です。
トランジスタがオンの時にLEDに流れる電流は、(VIN – VF -VCE) / R で計算できます。
DC調光の場合、電流量を変えるとLEDの発光波長が変わり色味が変わってしまうというデメリットと、やはり制御用トランジスタの発熱が大きくなるという問題があります。
PWM調光の場合、電流は一定なので色味の変化はありません。
人間の目に認識できない速さでスイッチングすることで、平均的な明るさが変化してDUTY比によって明るく見えたり暗く見えたりします。
LEDのPWM制御も、やはりトランジスタの損失が抑えられるというメリットがあります。
スイッチングレギュレータのPWM制御
電圧レギュレータにもリニア制御のものとPWM制御のものがあります。
前者の代表的なものがシリーズレギュレータ、後者がスイッチングレギュレータです。
シリーズレギュレータは、電圧制御用トランジスタが電力を熱として消費することで入力電圧より低い電圧を生成します。
対してスイッチングレギュレータは、PWM信号で生成した方形波をLCフィルタで平均化することで直流電圧を生成します。
動作波形は下記のようになります。
出力電圧は入力電圧とDUTYによって決まります。
スイッチングトランジスタはフルオン状態で使うため損失が少なく、90%以上の変換効率を達成することも可能です。
PWM制御のメリットとデメリット
リニア制御と比較した場合のPWM制御のメリット、デメリットをまとめました。
項目 | リニア制御 | PWM制御 |
---|---|---|
損失 | × | ○ |
ノイズ | ○ | × |
設計難易度 | ○ | × |
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