ソフトスタート回路とは?動作原理と必要理由を解説

ソフトスタート

ソフトスタートとは、DCDCコンバータ等の起動時の突入電流を抑制するための機能です。
出力電圧が時間に対しリニアに立ち上がるため、シーケンス制御のために使われることもあります。

最近ではLDOや高機能FETスイッチ(IPD)などにも搭載されています。

ソフトスタートの動作原理

ソフトスタートはレギュレータ起動時に出力電圧をゆっくり立ち上げることで突入電流を抑制しています。
起動時間と突入電流電流は下記計算式の関係となります。

Co×Vo = Io×t

Co:出力コンデンサ容量、Vo:出力電圧、Io:突入電流(出力電流)、t:ソフトスタート時間

ソフトスタートのタイミングチャート

したがって、突入電流を抑えるほど起動時間が長くなります。

DCDCコンバータICの場合ソフトスタート時間は外部のコンデンサで調整できるものが多いので、システムに合わせて最適化することができます。

ソフトスタート回路

ソフトスタート回路の主要ブロックは下図のような構成となります。

ソフトスタート回路

ソフトスタートの起動時間を決める回路はコンデンサと定電流源で決めます。
CV=Itの関係式で設定できます。

ソフトスタートのタイミングチャート

Cssの上端電圧と基準電圧源のどちらか低い方の電圧がエラーアンプの入力として採用されます。
したがって、Cssの上端電圧がVrefを超えるまではCssが充電される傾きに合わせて出力電圧が立ち上がります。

FETのソフトスタート回路

IPDなどの高機能なFETスイッチでは、ソフトスタート回路が搭載されています。
レギュレータとは違い、電流制限値をゆっくり上昇させることで突入電流を抑制します。
また、起動時にFETにかかる損失を低減する目的もあります。

下図が回路例とシミュレーション結果です。

FETのソフトスタート回路 ソフトスタート回路のシミュレーション結果

簡易的なソフトスタート

起動時に一定期間過電流検知レベルを絞って突入電流を抑制する方法です。
LDOやFETスイッチの簡易的なソフトスタート回路として用いられます。

下げた過電流検知レベルで制限された定電流で出力容量を充電しながら電圧が上昇していきます。

簡易ソフトスタートのタイミングチャート

前述のFETのソフトスタートと違い制限電流は一定値です。
出力電圧と同期していないためソフトスタート時間内に出力電圧が立ち上がり切る場合もありますし、出力容量が大きければ逆にソフトスタート時間内に立ち上がり切れず、突入電流が発生する場合もあります。

関連記事
スロープ補償とは?DCDCコンバータのサブハーモニック発…

スロープ補償とは、電流モード制御のDCDCコンバータにおいて、オンDUTYが50%以上の条件で発生する低調波発振(サブハーモニック発振)を抑えるために、電流センス信号に一定の傾きのスロープを足し込むことを指します。 INDEXサブハーモニック発振は何故起こるのかスロープ補償の原理…

飽和からの復帰時のレギュレータのオーバーシュートに要注意

LDOやDCDCコンバータなどのレギュレータ回路において、入出力飽和状態から復帰の際に大きなオーバーシュートが観測されることがあります。 車載システムでは特にバッテリ電圧の変動幅、スルーレート共に大きくなりますので対策が必要です。 ここでは、電源の飽和復帰時にオーバーシュートが大…

スイッチングレギュレータのノイズの発生原因と対策方法

スイッチングレギュレータ(DCDCコンバータ)は、効率が良いというメリットがある反面、ノイズが大きいというデメリットがあります。 ノイズ対策はカット&トライで行われている場合が多く、非常に時間がかかっているのが実情です。 スイッチングレギュレータのノイズ発生原因をしっかり理解でき…