逆起電力の発生原理と対策をわかりやすく解説

逆起電力

逆起電力とは、誘導性負荷駆動回路において、駆動回路オフ時に発生する逆方向の電圧のことです。
コイルサージ、逆起電圧とも呼ばれます。

逆起電力は瞬間的に発生する大きなサージ電圧となるため、接続されている電子デバイスの誤動作の原因になったり、最悪破壊してしまう可能性があります。

逆起電力が発生する原理

リレーやモータなどの誘導性負荷を駆動する回路を考えます。

逆起電力

スイッチがオンで電流が流れている状態からオフになっても、コイルは電流を流し続けようとします。
しかし、オフ状態ではスイッチがHi-Zになっているため、電圧が急上昇します。

この時発生する電圧は、電源電圧:VCCよりも大きくなるため、コイルには逆向きの電圧がかかります。
それにより、コイル電流は低下していき、それに伴い電圧も低下していきます。

電気回路におけるコイルの動作、役割

トランジスタスイッチの場合

スイッチにトランジスタを使用した場合、サージ電圧によりトランジスタがブレイクダウンするため、下図のような電流、電圧波形になります。

逆起電力

トランジスタがオフすると、逆起電力が発生し、コレクタ電圧:VCが上昇します。
VCがトランジスタの降伏電圧:VCEOを超えると、コイル電流がトランジスタのコレクタ-エミッタ間に流れます。

このとき、コイルにはVCC-VCEOの逆向きの電圧がかかるため、コイル電流は徐々に減少していきます。
コイル電流がほぼゼロまで低下すると、VCEOが低下し、ブレイクダウン状態が解除されます。
わずかな電流はトランジスタのコレクタ-エミッタ間の寄生容量とコイルで共振を起こし、徐々にゼロに収束していきます。

ブレイクダウンしている間、トランジスタにはVCEO × ILの大きな電力がかかります。
この時発生する過渡熱により、トランジスタが熱破壊する可能性があるため、逆起電力対策が必要になります。

逆起電力による負サージ

スイッチがハイサイドにあり、ローサイドの誘導性負荷を駆動する場合を考えます。

逆起電力による負サージ

トランジスタがオフしてもコイルは電流を流し続けようとするため、負サージが発生します。

負荷に印加される電圧をモニタする回路などが存在する場合、逆起電力による負サージでデバイスが破壊される場合があります。

逆起電力の対策方法

逆起電力の対策回路として、大きく4つの方法があります。

  1. ダイオードによる対策回路
  2. バリスタによる対策回路
  3. スナバ回路による対策
  4. アクティブクランプによる対策

詳しく解説していきます。

ダイオードによる対策

最も簡単なのが、コイルと並列にダイオードを挿入する方法です。
この方法はDC回路にのみ使えます。

ダイオード単体

ダイオード1つをコイルと並列に入れるだけの回路です。

ダイオードによる逆起電力対策

スイッチがオフした時に流れ続ける電流が、ダイオードを介して電源側へ戻されます。
コレクタ電圧はダイオードによりクランプされるため、VCC+VFまでしか上昇しません。

この方法にはデメリットが2つあります。

  1. コイルにかかる逆電圧は-VFと小さいため、コイル電流がゼロになるまでの時間が長い
  2. 電源側へ電流が逆流するため、電源電圧が上昇する場合がある
ダイオードの選定方法
重要なのは順方向電流になります。
スイッチがオフする直前にコイルに流れている電流がダイオードに流れる最大電流となるため、それ以上の電流定格を持つダイオードを選定する必要があります。

選定の基準として良く書かれている「回路電圧の10倍以上の逆耐圧を持つもの」という条件ですが、この回路では逆起電圧はダイオードの順方向に発生します。
ダイオードに逆電圧がかかっているのはスイッチがオンしている時になるので、逆耐圧は電源電圧+αの部品でも破壊することはありません。

ダイオード+ツェナー

ツェナーダイオードを使うことで、クランプ電圧をダイオード単体の場合より大きくします。
これにより、スイッチオフ時のコイルにかかる逆電圧が大きくなり、電流の収束時間(復帰時間)が短くなります。

ダイオードとツェナーによる逆起電力対策

ツェナー電圧が大きい部品を選ぶほど、収束時間は短くなります。
コレクタ電圧は、VC=VCC+Vz+VFまで上昇しますので、VCがトランジスタの耐圧を超えないようなツェナー電圧にする必要があります。

バリスタによる対策

コイルと並列にバリスタを接続する方法です。

バリスタによる逆起電力対策

考え方は「ダイオード+ツェナー」の回路と同じですが、バリスタの場合は正負両側にクランプ電圧を持つため、AC回路でも使えます。

スナバ回路(CR方式)

スイッチオン中にコイルに溜まったエネルギーをRC回路で消費させることで逆起電力を抑える方法です。
この回路はAC回路でも使えます。

スナバ回路とは?動作原理と定数の決め方を解説

コイルと並列に接続

コイルと並列スナバ回路を接続し、スイッチオフ時のコイル電流を電源側へ回生させます。
抵抗によって発生する損失によってコイルに溜まったエネルギーを消費します。

スナバ回路による逆起電力対策

コンデンサ容量が大きいほどリンギング周波数が低下し、抵抗が大きいほどリンギングの減衰が速くなります。

定数の選定方法

スナバ回路の効果を分かりやすくするため、上記回路でスナバコンデンサを0.47uFとしてみます。

スナバ回路による逆起電力対策

スイッチオフ時の電圧上昇は、2つの要因で決まります。

1つはコイル電流とスナバ抵抗によるもの。
単純にIL×Rで決まります。

抵抗値が小さいほど逆起電圧は小さくなりますが、復帰時間が長くなりますので、バランスを見て調整する必要があります。

VC電圧が許容できる程度の電圧になるように抵抗値を選びます。

もう一つはコイル電流によりスナバコンデンサが充電されることで発生する電位差です。
これは、コンデンサの関係式で決まります。

コンデンサの公式

コイルのインダクタンスが大きいほど復帰時間が長くなるため、上記関係式より発生する電位差が大きくなります。
目安としてインダクタンスの1/10程度のコンデンサ容量を選定します。

コンデンサは大きいほど逆起電力の対策効果は大きくなりますが、サイズ、コストの問題がありますので、抵抗値と合わせて調整する必要があります。

コイルと直列に接続

コイルと直列にスナバ回路を接続し、スイッチオフ時のコイル電流をGND側へ回生させます。
考え方は並列接続の場合と同じです。

スナバ回路による逆起電力対策

アクティブクランプ

アクティブクランプとは、誘導性負荷の駆動時に発生する逆起電圧でトランジスタスイッチが破壊しないように、耐圧以下の電圧でクランプする技術です。

アクティブクランプ回路

動作波形は下記のようになります。

アクティブクランプ動作

耐圧以下で設定した閾値を超えると、MOSFETがオンしてドレイン電圧を上昇しないようにクランプします。

詳細は下記ページをご参照ください。
アクティブクランプとは

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