電流モード制御とは?種類と電圧モードとの違いを解説

電流モードスイッチングレギュレータ

電流モード制御とは、スイッチングレギュレータの制御方式の一つで、コイル電流をフィードバックして出力電圧の制御に使うことを特徴としています。

電圧モードが出力電圧を制御しているのに対し、電流モードは設定した出力電圧にするために必要な電流を制御する方式と言えます。

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電流モードの動作原理

前述の通り、設定した出力電圧にするために必要な電流を制御します。
例えば、出力電圧を5Vに設定した場合、負荷が5Ωであれば1Aを出力するように制御します。

つまり、

負荷のインピーダンス × 出力電流 = 出力電圧

になるように電流を制御しているのです。

IC内部では、出力電圧と出力電流を比較して、狙った電圧になるように出力電流を制御しています。
下図は電流モードの中でも最もよく使われるピーク電流制御方式の制御波形です。

電流モード制御波形

出力電圧のフィードバック値と出力電流(コイル電流)のフィードバック値を比較し、コイル電流のピーク値が狙った出力電圧に必要な電流値に達するとスイッチングがオフします。

より詳しい動作原理の解説は、以下の記事をご参照ください。

DCDCコンバータICの内部回路動作をシミュレーション波形を使って解説

電圧モードとの違い

電流モードと電圧モードの違いをまとめてみました。

項目 電圧モード 電流モード
制御対象 出力電圧 出力電流
ラインレギュレーション ×
ロードレギュレーション ×
電源急変動に対する応答性 ×
負荷急変動に対する応答性 ×
位相補償の難易度 ×
ノイズ耐性 ×

入力電源、負荷変動について

電圧モードの伝達関数は入力電圧の依存性があるため、入力変動に弱くなります。
そのため、ラインレギュレーションや入力電源変動による出力電圧の変動が大きくなります。

電流モードの伝達関数は出力電流の依存性があるため、負荷変動に弱くなります。
そのため、ロードレギュレーションや負荷急変動による出力電圧の変動が大きくなります。

位相補償について

電圧モードは出力のLCフィルタによるダブルポールができるため、位相補償の難易度が高くなります。
電流モードの場合はLCフィルタによるダブルポールが発生しないため、位相補償が容易になります。
この点が電圧モードより電流モードが好まれる大きな理由の一つです。

スイッチングレギュレータの位相補償のやり方と位相余裕の計算方法

ノイズ耐性について

電流モードのデメリットとして、ノイズ耐性の弱さが挙げられます。
電流センス部分にスパイクノイズが乗ってスイッチングが誤オフするという問題が起きます。

技術の進歩により改善してきてはいますが、電圧モードに比べると注意が必要な部分になります。

サブハーモニック発振

電流モードは原理上、DUTYが50%以上でサブハーモニック発振(低調波発振)が起こります。
対策としてスロープ補償がIC内部で施されていますが、使用するコイルのインダクタンス値に制限があります。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

スロープ補償とは?DCDCコンバータのサブハーモニック発振を対策

二次側電源では電圧モードが見直されている

位相補償がしやすいという大きなメリットから、DCDCコンバータでは電流モードが主流になっていました。
しかし、CPUの消費電流の増大、電流変動S/Rの増大などから、負荷変動の影響を受けない電圧モードが見直されてきています。

CPUに供給する電圧は1V前後まで低くなってきているため、前段にプリレギュレータを挟んで二次電源としてCPUに供給する場合がほとんどです。
プリレギュレータによって入力電源が一定しているということは、入力電源変動に弱いという電圧モードのデメリットがなくなります。

さらに、入力電圧を低くできることから、スイッチング周波数を高くでき、コイルのインダクタンス値を小さくすることができます。
それにより、LCフィルタの共振周波数が高くなり、位相補償がしやすくなります。

以上により、二次電源においては電流モードより電圧モードの方が有利に働く場合が多いため採用が増えてきているのです。

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