サレンキー型3次フィルタの特性と設計計算

前回はサレンキー型2次フィルタについて解説しましたので、本稿ではサレンキー型の3次ローパスフィルタ、ハイパスフィルタの設計方法や特性について解説していきます。

サレンキー型2次フィルタの特性と設計計算

3次ローパスフィルタ(LPF)

サレンキー型の3次ローパスフィルタはこのような回路です。

サレンキー型の3次ローパスフィルタ

1次フィルタの後ろに2次のアクティブフィルタが接続された形になります。

伝達関数は以下の式で表されます。

サレンキー型の3次ローパスフィルタの伝達関数

設計計算

R1<<R2=R3とすることで、1次フィルタと2次フィルタをほぼ分けて考えることができます。
ここでは、R1=1kΩR2=R3=100kΩとします。

一次フィルタは単純なRCフィルタなので、カットオフ周波数は

カットオフ周波数

となります。
カットオフ周波数を1kHzとすると、C1=0.159uFとなります。

2次フィルタは前回の記事で解説した通り下記の式でC2、C3を求めることができます。

サレンキー2次フィルタ計算

カットオフ周波数を1kHz、Q値を1とすると、C2、C3はC2=3183pFC3=796pFとなります。

全体でのQ値は掛け算となり、1次フィルタのQ値が1/√2、2次フィルタが1なので、Q=0.707となります。

周波数特性

上記で求めた定数に近いものをE24系列から選んで、C1=0.16uF、C2=3300pF、C3=820pFとしてシミュレーションで周波数特性を確認します。

サレンキー3次LPFシミュレーション回路
サレンキー3次LPF周波数特性

Q=0.707なので、カットオフ周波数で-3dBとなっています。

また、減衰特性は-60dB/decadeとなっています。

3次ハイパスフィルタ(HPF)

サレンキー型の3次ハイパスフィルタはこのような回路です。

サレンキー3次HPS

1次のハイパスフィルタの後ろに2次のアクティブフィルタが接続された形になります。

伝達関数は以下の式で表されます。

サレンキー3次HPS伝達関数

設計計算

C1>>C2=C3とすることで、1次フィルタと2次フィルタをほぼ分けて考えることができます。
ここでは、C1=0.1uFC2=C3=1000pFとします。

一次フィルタは単純なRCのハイパスフィルタなので、カットオフ周波数は

カットオフ周波数

となります。
カットオフ周波数を1kHzとすると、R1=1.59kΩとなります。

2次フィルタは、下記の式でR2、R3を求めることができます。

サレンキー2次フィルタ計算

カットオフ周波数を1kHz、Q値を1とすると、R2、R3はR2=79.6kΩ、R3=318kΩとなります。

周波数特性

上記で求めた定数に近いものをE24系列から選んで、R1=1.6kΩ、R2=82kΩ、R3=330kΩとしてシミュレーションで周波数特性を確認します。

サレンキー3次HPFシミュレーション回路
サレンキー3次HPF周波数特性

ローパスフィルタ同様、Q=0.707なので、カットオフ周波数で-3dBとなっています。

また、減衰特性は-60dB/decadeとなっています。

関連記事
オペアンプを使った微分回路の動作原理をシミュレーション波…

微分回路(微分器)とは、入力波形を時間微分した電圧(傾き)を出力する回路です。 微分回路の用途としてはハイパスフィルタやDC成分除去回路などがあります。 合わせて学習 オペアンプ回路の基礎と設計計算の方法 INDEX微分回路の原理微分回路の計算と波形微分回路の動作を解説微分回路の…

アクティブフィルターとは?特徴とメリットとデメリットを解…

アクティブフィルタとは、オペアンプを使ったフィルタ回路です。 パッシブフィルタと違い、フィルタに様々な特性を持たせることができます。 本稿では、アクティブフィルタとパッシブフィルタの違いと、アクティブフィルタの種類について解説していきます。 INDEXアクティブフィルタとパッシブ…

オペアンプを使った積分回路の原理と動作波形、用途について…

積分回路(積分器)とは、入力波形を時間積分した電圧を出力する回路です。 積分回路の用途としてはローパスフィルタやノイズ除去回路などがあります。 CR回路によるローパスフィルタやノイズ除去回路に比べて、出力インピーダンスが低いことと、入力側が出力側に繋がる回路の影響を受けないという…

コンパレータの設計方法とヒステリシスの作り方

コンパレータとは、2つの入力電圧を比較して出力を切り替える回路です。 非反転入力端子(+端子)の電圧の方が高ければ出力電圧はHi、反転入力端子(-端子)の電圧の方が高ければ出力電圧はLoとなります。 片側の入力電圧を固定して閾値とし、もう一方の電圧が閾値より高いか低いかを判定する…

スロープ補償とは?DCDCコンバータのサブハーモニック発…

スロープ補償とは、電流モード制御のDCDCコンバータにおいて、オンDUTYが50%以上の条件で発生する低調波発振(サブハーモニック発振)を抑えるために、電流センス信号に一定の傾きのスロープを足し込むことを指します。 INDEXサブハーモニック発振は何故起こるのかスロープ補償の原理…