アルミ電解コンデンサの寿命計算、劣化による容量抜けについて

電解コンデンサの寿命

電子機器の中で、アルミ電解コンデンサは半導体部品に比べ寿命が短く、製品の寿命=電解コンデンサの寿命であることも少なくありません。
アルミ電解コンデンサの寿命は温度による加速が大きいため、周囲温度とリップル電流による発熱が寿命を決める主な要素となります。

電解コンデンサの寿命の定義

コンデンサの寿命は次の3つの特性が既定値を超えるまでの時間で定義されます。

  1. 容量変化率
  2. 誘電正接(tanδ)
  3. 漏れ電流
誘電正接とは
コンデンサに交流電圧を印加すると、内部でエネルギーの一部が熱として消費されます。
誘電正接は、この電気エネルギーの損失度合いのことです。
コンデンサ内のESRとESLにより位相が遅れることが原因で発生します。
劣化によりESRとESLが大きくなることで誘電正接が大きくなります。

耐久性の規格はメーカーや製品によって多少異なりますが、概ね以下の通りです。

容量の変化率 誘電正接の変化率 漏れ電流
30%以下 200%以下 初期規格値以下

一般的な電解コンデンサの寿命

代表的なメーカーの電解コンデンサの寿命を以下にまとめました。

メーカー 品番 寿命 温度条件 グレード
エルナー RVO-6V470ME55P2U-R2 2000H 85℃ 一般
RVZ-6V470ME61UQ-R2 1000H 105℃ 自動車向け
日本ケミコン EMZK160ARA470ME61G 5000H 105℃ 一般
EMZR350ARA470ME61G 2000H 105℃ 自動車向け
ニチコン UZG1C470MCL1GB 1000H 105℃ 自動車向け
パナソニック EEVEB2C470SM 5000H 105℃ 一般
EEETC1V470V 3000H 125℃ 自動車向け

寿命の計算

アルミ電解コンデンサの寿命は、封口部から電解液が蒸散することが大きな要因を占めます。
電解液の蒸散は温度と関係し、寿命の計算式は以下で示されます。

寿命の計算式

L:使用温度条件での寿命
L0:製品で規定された上限温度での寿命
Bt:温度加速係数
T0:製品で規定された上限温度
T:実使用温度

温度加速係数は、ほぼ2となるため、簡易的にアレニウスの法則で近似される場合があります。
アレニウスの法則は、使用温度が10℃下がれば寿命が2倍になるという関係から、10℃2倍則とも呼ばれます。

85℃、2000Hのコンデンサを65℃で使用したとすると、アレニウスの法則で計算した寿命は

アレニウス則

となり、温度が20℃低下すると寿命が4倍になっていることが分かります。

寿命に余裕がある場合は、アレニウス則で計算してもよいのですが、シビアな計算が必要な場合は、温度範囲ごとの温度加速係数をメーカーから入手し、厳密に計算する必要があります。

劣化による症状

メーカーの耐久性条件に示されている通り、劣化により影響を受けるのは、容量、誘電正接(ESR/ESL)、漏れ電流の3つです。
ここから考えられる製品への影響として、

  • ノイズ性能の悪化
  • 電源の安定性の悪化
  • 消費電流、暗電流の増大
  • 音質の悪化(オーディオ製品)

などが考えられます。

また、封止ゴムの劣化による電解液漏れにも注意する必要があります。
電源の安定化コンデンサとして使用している場合、漏れた電解液が電源-GND間をショートさせ、火災の原因になる事例もあります。

劣化、容量抜けの診断方法

容量抜けのチェック方法を3つご紹介します。

外観をチェック

劣化により電解液が蒸発していると、コンデンサ内部の圧力が高くなるためケースが膨らみます。
膨らみの有無を確認することで劣化の有無を判断できる場合があります。

抵抗値を測定

容量が小さければ、テスタで抵抗値を測定することでチェックできます。
正常品であれば、コンデンサの抵抗値を測定すると、徐々に上昇していき最後には無限大になります。
しかし、劣化品は漏れ電流が大きくなっているため抵抗値が無限大になりません。

放電時間を比較する

容量が大きい場合は充電に時間がかかるため、なかなか抵抗値が無限大になりません。
そこで、抵抗で放電した場合の電圧の低下時間を正常品と比較することで劣化しているかどうかが判断できます。

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