IPDとは?【インテリジェント・パワー・デバイス】
IPDとは、Intelligent Power Deviceの略で、負荷異常時の保護に加え、スイッチがオフした際に発生する逆起エネルギーを吸収する機能を持ったパワーデバイスです。
大きな逆起エネルギーが発生する自動車等の負荷駆動で使われる場合が多い製品です。
IPS(Intelligent Power Switch)、スマートハイサイドスイッチ/スマートローサイドスイッチと呼ばれる場合もあります。
回路図
IPDは以下のような回路構成になっています。
メインのパワースイッチと、それを保護するアクティブクランプ回路、過電流保護、過熱保護などが搭載されています。
過電流検知レベルは外部で設定できるものもあります。
異常状態をマイコン等へ出力する端子を持つものを使えば、システムとしてのフェールセーフ性能を向上させることができます。
用途
逆起エネルギーが発生するL性負荷を駆動するのに使われます。
- ランプ
- ヒーター
- モーター
- ソレノイド
など。
産機系や車載ECUに搭載されることが多い製品です。
アクティブクランプとは
アクティブクランプとは、誘導性負荷の駆動時に発生する逆起電圧でFETスイッチが破壊しないように、耐圧以下の電圧でクランプする技術です。
ダイナミッククランプと呼ばれる場合もあります。
アクティブクランプが必要となる理由
ローサイドスイッチを考えます。
オンからオフに切り替わった際、誘導性負荷は電流を流し続けようとします。
スイッチはオフしているためHi-Zになっています。
そのため、MOSFETのドレイン電圧は急激に上昇し、VDS耐圧:VDSSを超えたところでMOSFETがブレイクダウンして破壊してしまいます。
したがって、誘導性負荷で起こる逆起電力を吸収して保護する必要があります。
これがアクティブクランプが必要な理由です。
アクティブクランプ回路の動作
アクティブクランプは下図のような回路になります。
パワーFETのドレイン-ゲート間にツェナーダイオードとPNダイオードを挿入した回路です。
動作波形は下記のようになります。
パワーFETがオフすると、ドレイン電圧:VDが上昇します。
アクティブクランプ回路の両端電圧がVz+VFを超えるとツェナーがブレイクして電流Iacが流れVGSが上昇します。
VGSがゲートしきい値電圧以上に上昇するとパワーFETがオンし、誘導性負荷の回生電流を吸い込みます。
誘導性負荷に溜まったエネルギーを吸収するまでパワーFETがオンし続けます。
その間、VDはアクティブクランプ電圧=Vz+VF+VGSでクランプされます。
誘導性負荷のエネルギーが減少してVDがアクティブクランプ以下まで低下すると、パワーFETはオフし、VD電圧は共振しながらVBATに収束します。