ポールとは?ゼロとは?分かりやすく解説!
オペアンプやレギュレータの位相補償をするために欠かせない知識がポールとゼロ。
しっかり理解すればカットアンドトライでやっていた位相補償を狙って行うことができるようになります。
できるだけ分かりやすく解説していきたいと思います。
伝達関数についても触れますので、以下の記事も合わせてご覧ください。
ポールとは?
ポール(極)とは、ローパスフィルタで言うところのカットオフ周波数のことです。
制御工学での定義としては「伝達関数が∞になる点」です。
位相補償を行う上では、ポールは位相を90°遅らせて、ゲインを20dB/decの傾きで低下させるものと理解しておくといいでしょう。
ポールのボーデ線図
R=1kΩ、C=0.015uFで構成したローパスフィルタを考えます。
ポールのボーデ線図(ボード線図)は以下のようになります。
ポール(=カットオフ周波数)は、1/2πRCより10.61kHzとなります。
ゲインはポールにおいて-3dBになります。
そこから周波数が10倍になるごとに20dB下がっていきます。
位相は、ポールの1/10の周波数から遅れはじめ、ポールで45°遅れ、ポールの10倍の周波数で90°遅れます。
1/10、10倍という周波数は簡略化されたボーデ線図を描くときに使われる値で、実際には前出のグラフのようになだらかに位相が回ります。
ポールの伝達関数
前出のローパスフィルタの回路で伝達関数を計算します。
ゲインは伝達関数の絶対値で表すことができるので、
となります。
位相は伝達関数の偏角ですので、
で計算ができます。
エクセルを使ってゲインと位相の周波数特性を描かせたものが前出のボーデ線図になります。
ゼロとは?
ゼロ(零点)は、ポールとは逆で位相を90°進め、ゲインが+20dB/decの傾きを持つものと理解しておくといいでしょう。
制御工学での定義としては「伝達関数が0になる点」です。
位相を進めると言っても、ほとんどの場合はポールによって遅れた位相を戻すために使われます。
同時に、ポールによって低下しているゲインは下げ止まります。
ゼロのボーデ線図
ボーデ線図(ボード線図)でゼロの効果を確認しましょう。
下図のようなRC回路を考えます。
R1とCによってできたポールをR2とCによってできるゼロでキャンセルする回路です。
R1=470kΩ、R2=100Ω、C=0.01uFとすると、
ポール:fp = 1 / 2π×R1×C = 34Hz
ゼロ:fz = 1 / 2π×R2×C = 159kHz
となります。
R1>Zc>R2の周波数領域ではR2が無視されR1とコンデンサによるローパスフィルタとして働きます。
Zc<R2の周波数になると、コンデンサのインピーダンスが無視できるようになるため、R1とR2の抵抗分割回路と見ることができます。
Zc = R2となる周波数がゼロ(零点)になります。
ポールによる-20dB/decの傾きがゼロによる20dB/decの傾きでキャンセルされゲインはフラットになり、90°遅れていた位相は0°に戻ります。
ゼロの伝達関数
前出の回路で伝達関数を計算します。
ゲインは伝達関数の絶対値で表すことができるので、
となります。
位相は伝達関数の偏角ですので、
で計算ができます。
エクセルを使ってゲインと位相の周波数特性を描かせたものが前出のボーデ線図になります。
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