スイッチングレギュレータのノイズの発生原因と対策方法

ノイズ対策

スイッチングレギュレータ(DCDCコンバータ)は、効率が良いというメリットがある反面、ノイズが大きいというデメリットがあります。
ノイズ対策はカット&トライで行われている場合が多く、非常に時間がかかっているのが実情です。

スイッチングレギュレータのノイズ発生原因をしっかり理解できれば、カット&トライではなく、狙って対策を行うこともできるようになり、開発工数の削減にも繋がります。

電流ループの最小化

スイッチングレギュレータのノイズ対策で最も重要なのが、電流ループの面積の最小化です。
スイッチングレギュレータでは、下図の経路の電流ループから大きな輻射ノイズが発生します。

ノイズ発生経路

特に、①のスパイク電流が流れる経路は最優先で対策する必要があります。
昇圧の場合はFET-ダイオード-出力コンデンサのループが①に相当します。

これら3つの電流ループ経路が表層で最短で結線することで電流ループの面積を最小化し、ノイズの発生を抑えることができます。

スイッチング・スルーレートの低減

スイッチングの立ち上がり、立ち下がりのスルーレートを下げることでノイズの発生量を抑えることができます。

スイッチング波形

対策方法としては、スイッチングFETのゲートに抵抗を挿入する方法と、ブートストラップラインに抵抗を挿入する方法があります。

ノイズは抑えられますが、背反としてスイッチング損失の増大により発熱が大きくなってしまいますので、ノイズと熱のバランスを取る必要があります。

同期整流の場合、鈍らせすぎると上下のFETが同時オンする領域ができて貫通してしまいますので注意が必要です。

ブート抵抗は、トップFETのオン側にだけ効きます。
それでも、スパイク電流対策になるので効果は大きいです。
抵抗が大きすぎるとIC内部の誤動作に繋がる場合があるので、メーカーにブート抵抗の限界値を予め確認しておく必要があります。

スパイクノイズ対策

スパイクノイズは入力側と出力側に発生します。

入力側のスパイクノイズ

FETがオンした時に発生するスパイク電流によって入力電圧にスパイク状のノイズが重畳します。

スパイクノイズ

スパイク電流はダイオードの逆回復時間によって発生しますので、これらの値が小さいものを選ぶことでスパイクノイズを抑えることができます。
また、前述のようにスイッチングのスルーレートを鈍らせることでもスパイクノイズを低減させることができます。

出力側のスパイクノイズ

インダクタの寄生容量によって、スイッチング波形が出力とカップリングを起こすことで出力側にスパイクノイズが発生します。

スパイクノイズ

対策としては、寄生容量の小さいコイルを選定することと、スイッチング波形を鈍らせることでもスパイクノイズの低減ができます。

ゲートドライブ配線を短くする

外付けMOSFETをドライブするコントローラICを使用する場合、ゲートドライブ配線の引き回しが長くなると寄生インダクタンスが付きリンギングが発生します。
特にVIAを介して接続するとインダクタンスが大きくなるため、表層で最短で接続するようにしましょう。

寄生インダクタンス

スイッチノードとのクロストーク

MOSFETとショットキーダイオード、コイルが接続された点をスイッチノードと呼びます。
スイッチノード電圧は、電圧が-VFからVINまで変動する大振幅の矩形波になります。

したがって、スイッチノード付近にインピーダンスの高い信号ラインが走っていると、クロストークしてノイズが混入してしまいます。

コイルの選定

コイルは、磁束によって輻射ノイズが発生します。
特に注意が必要なのは、複数の基板で構成された製品の場合、コイルの真上にノイズに弱いデバイスや配線があった場合に影響を与えてしまいます。

大規模な製品開発の場合、基板ごとに別々の担当部門が開発していて気付けない場合がありますので、自身の担当ブロックだけでなく、全体を見てレビューをする必要があります。

コイルの輻射ノイズ

コイルの輻射ノイズは、フェライトコアの製品よりメタルコンポジットタイプのものが小さくなりますが、コストがかなりアップしてしまいます。
また、村田製作所やTDKなどが展開しているチップタイプのメタル系インダクタは、コイル自身の輻射ノイズが小さいだけでなく、サイズが小さいことにより電源の配線パターン全体をシュリンクでき、電源全体でのノイズ低減にも役立ちます。

スナバ回路

スナバ回路(Snubber circuit)とは、トップFETオン時にスイッチノードに発生する高周波リンギングを吸収してノイズを低減するための回路です。
スナバ回路は下図のようにスイッチノードとGNDの間に接続する直列のRCフィルタです。

スナバ回路

トップFETオン時の高周波電流をダイオードの寄生容量ではなく、スナバ回路側で受けることで、高周波ノイズ成分を抵抗で熱に変えることができます。

スナバ回路波形

スナバ回路の設計方法は下記ページをご参照ください。

スナバ回路とは?動作原理と定数の決め方を解説

DCDCコンバータICの機能で対策

DCDCコンバータICには、様々なノイズ対策機能が搭載されたものがあります。
上手く使いこなすことで外部対策なしでノイズ対策を行える可能性があります。

周波数外部同期

外部クロックに同期してスイッチングを行う機能です。
車載向けICに搭載されている場合が多い機能です。

自動車に搭載されるシステムの場合、ラジオの受信帯域へのノイズに特に注意を払う必要があります。
しかし、AM帯はおおよそ500kHz~1800kHz付近で複数の受信周波数があるため、スイッチング周波数の逓倍ノイズが被る確率が高くなります。

そこで、CPUから出力したクロックと同期させることで、周波数のばらつきが少なくなり、受信帯域を避けやすくなります。
さらに、CPUが現在の受信チャンネルを判別し、動的にクロックの周波数を変えることで逓倍ノイズが被ることを回避することができます。

>>外部同期機能搭載ICを探す

スペクトラム拡散

スイッチング周波数を拡散することで、ノイズのピークレベルを抑えることができます。

スペクトラム拡散

ただし、スイッチング周波数を中心にノイズが広がり、高周波になるとフロアレベルが上昇したような状態になり、問題となる場合があります。

>>スペクトラム拡散機能搭載ICを探す

不連続モード対策

不連続モードになると、LCフィルタによる共振が発生し、共振周波数のノイズが問題になることがあります。

不連続モード

不連続モードの動作波形

同期整流タイプのICなら、軽負荷時の逆流電流をボトムFETがシンクするので、常に連続モードで動作します。

強制連続モード

強制連続モードの動作波形

>>同期整流DCDCコンバータICを探す

最適な周波数特性を持つコンデンサを選定

コンデンサのインピーダンスの周波数特性には違いがあり、容量の小さいものほど高周波側に減衰のピークがあります。
入出力に付加する安定化容量は比較的容量が大きいため、高周波のノイズが除去できません。

そこで、入出力の安定化容量と並列に容量の小さなコンデンサも追加することで高周波ノイズを除去することができます。
下図のような周波数特性が、メーカーのHPやデータシートに記載されている場合があるので確認してみてください。

コンデンサの周波数特性

ノイズが問題となっている周波数でのインピーダンスが小さいコンデンサを選んでみてください。

EMI対策部品を追加する

フェライトビーズ、EMIフィルタ、3端子コンデンサなどのEMI対策部品を追加して高周波ノイズを除去します。

大きなインダクタンスを持つコイルでは除去できない高周波ノイズを除去するため、入出力の外側に配置します。

EMI対策部品

フェライトビーズ

リードタイプのフェライトビーズは、リング状のフェライトの中をリード線が通る構造をしており、フェライトが電流の高周波成分を熱に変えて除去します。

フェライトビーズ

一方、チップタイプのフェライトビーズは表面実装が可能で、フェライトシートの間をインダクタが通るような内部の構造になっています。
単体で減衰量が不足する場合は、コンデンサと組み合わせてノイズ除去性能を上げることができます。

EMIフィルタ

インダクタとコンデンサを組み合わせたフィルタです。
エミフィルという名称でも広く知られていますが、これは村田製作所の商標になります。

LCフィルタタイプや、T型、π型などがあります。
コンデンサが組み合わされているので、フェライトビーズよりも高いノイズ除去性能を有しています。

3端子コンデンサ

GND端子を追加して、高周波特性を改善したものが3端子コンデンサです。
等価回路は下図のようにT型になります。

3端子コンデンサ

チップタイプの3端子コンデンサはGND端子を2つ持っているため、実際には4端子あることになります。

シールドや電波吸収シートを使う

電子部品での対策で防ぎ切れなかった輻射ノイズは、シールドや電波吸収シートで外部に出ることを防ぎます。

シールドは主に金属でできており、ノイズ発生源を囲うことで輻射ノイズを閉じ込めます。

シールド

シールドのカバーを外したところ。この枠にカバーを被せシールドする。

電波吸収シートは柔らかい、磁性材料を配合した樹脂素材でノイズ発生源に貼り付けて使います。
シートが高周波ノイズを吸収することでノイズの漏れを抑えることができます。

EMS(イミュニティ)対策

EMS(イミュニティ)対策とは、外部からのノイズを受けてデバイスが誤動作しないようにすることです。

DCDCコンバータの場合、主にフィードバックラインへのノイズ混入により出力電圧に異常が生じます。
特に、電圧が上昇してしまう場合は、供給側のデバイスを破壊してしまう可能性があるため確実に対策する必要があります。

DCDCコンバータのフィードバックは、出力電圧のフィードバックの他、電流のフィードバック経路も存在します。

電圧フィードバック経路の対策

フィードバック端子のインピーダンスが高いことでイミュニティによる電圧変動が起き、出力が変動してしまいます。
消費電流を減らそうとしてフィードバックラインの分圧抵抗の値を大きくした場合に起こりやすくなります。

対策としては、

  1. 抵抗値を小さくする
  2. 対GNDにコンデンサを追加
  3. フェライトビーズを追加

などが考えられます。

イミュニティ対策

コンデンサは、下側の抵抗とのカットオフ周波数でポールを発生させてしまいます。
スイッチング周波数以下になると、位相余裕を悪化させてしまいますので、あまり大きい容量は使えません。

フェライトビーズは、IC端子の直近に配置しましょう。
また、通常動作時に問題はないか、必ずビーズを実装した状態で特性評価を行ってください。

電流フィードバック経路の対策

電流モードの場合、電流をフィードバックしてスイッチングの制御信号として使っています。

電流モード制御とは?種類と電圧モードとの違いを解説

そのため、電流のフィードバックラインへのノイズ混入も誤動作の原因となります。

バイパスコンデンサの追加や、RCフィルタの追加が対策となります。
ただし、センス信号を鈍らせすぎると正常に電流検知できなくなりますので注意が必要です。

イミュニティ対策

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