SOA(安全動作領域)とは?ディレーティングなどの考え方を解説

SOA 安全動作領域

安全動作領域とは、MOFFETやバイポーラ、IGBTなどのトランジスタが破壊せずに安全に動作できる電圧・電流範囲を示したものです。
安全動作領域を一瞬でも超えると破壊する可能性があるため、あらゆる動作条件において領域内の範囲に収まるように設計する必要があります。
安全動作領域は、SOA(Safe Operating Area)や、ASO(Area of Safety Operation)などと呼ばれることもあります。

SOA(安全動作領域)の見方

下記はMOSFETのSOAの例です。

SOA安全動作領域

ここに示されている4つの制限領域を超えない範囲でトランジスタを使用する必要があります。
4つの制限領域について解説していきます。

電流制限領域

ドレイン電流の最大定格(パルスの場合はID(pulse))によって制限される領域です。
VDSが低い領域なので、定格電流だけで制限されます。

熱制限領域

許容損失によって制限される領域です。
VDSが広がってくるので、定格電流に達する前に許容損失を超えてしまうことで制限されています。

各製品のデータシートに記載されているSOAは、特定の基板に実装した場合の条件で記載されています。
実際に搭載する基板条件によっては、SOAの領域が狭くなる場合もあるので注意が必要です。

二次降伏領域

MOSFETの素子内の局所的なVTHのばらつきにより、電流集中が起こる領域が発生します。
さらに素子内でも熱抵抗の違いもあるため、電流集中と合わさって温度上昇が大きくなる領域があります。
これをホットスポットといいます。

同一素子内であるため、ばらつきはそれほど大きくないのでVDSが低い領域では影響はありませんが、VDSが大きい領域では影響が大きくなります。

したがって、あるVDS以上になると熱制限領域の傾きより大きな傾きで低下し始めることになります。

ドレイン-ソース間電圧制限領域

ドレイン-ソース間の絶対最大定格:VDSSによって決まる領域です。

温度デイレーティングの考え方

トランジスタのデータシートに記載されているSOAはTa=25℃の条件のみです。
そのため、25℃以上の条件で使用する場合は温度ディレーティングを考える必要があります。

まず、許容損失の温度特性のグラフを確認します。

許容損失

ここではTa=85℃で使用する場合を考えます。
Ta=85℃の許容損失はTa=25℃より60%低下して、0.4×PDとなっています。

これを基にSOAの温度デイレーティングを考えると下図のようになります。

安全動作領域の温度ディレーティング

ドレイン電流の最大値は一定なので、Ta=85℃の許容損失が60%減となるとVPDが60%減となります。
したがって、温度制限領域の境界線が左に-60%移動します。

VDSSも一定のため、VDSSにおいて流せるドレイン電流が60%減となります。
よって、二次降伏の境界線は下に60%移動します。

ドレイン電流、ドレイン-ソース間電圧の最大定格は全温度範囲で規定されている前提で説明しましたが、常温のみの規定となっている場合もあります。
その場合は「電流制限領域」の境界線が下に移動し、「ドレイン-ソース間電圧制限領域」の境界線が左に移動することになります。

SOAを超えて破壊するシチュエーション

SOAを確認していたはずが、実際に回路を制作すると破壊してしまったということが度々起こります。
もっとも多いのが、定常状態の使用条件でしか確認していなかったというものです。

SOAを超えて破壊するモードで最も多いのがトランジスタのロードスイッチ回路です。
ロードスイッチの場合、負荷側に大きな安定化容量が接続されている場合がほとんどです。

下記のような回路でスイッチをオンすると、電源から負荷側のコンデンサに大きな突入電流が流れます。
これによりSOAを超え破壊してしまうのです。

MOSFETが破壊する回路 突入電流

対策としてはゲート-ソース間、またはゲート-ドレイン間にコンデンサを挿入することです。

突入電流防止回路

これによりゲート電圧の低下速度が遅くなり、オン時の突入電流が低減されSOA内に収めることができるのです。

突入電流防止波形

スイッチ回路以外にも、サージ電圧が入力された時にSOAを超えたり、放熱条件が悪くてSOAが狭くなってしまうといった場合なども破壊の原因として考えられます。

このように、定常条件だけでなく起こり得る様々な条件を考えてSOAを超えていないことを確認する必要があります。

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