アーリー効果とは?メカニズムとアーリー電圧の求め方

アーリー効果

アーリー効果とは、コレクタ電圧が高くなることでベース幅が薄くなりhFEが増大する現象です。
これにより、コレクタ-エミッタ間電圧が大きくなるとコレクタ電流が増加するという特性が見られます。

アーリー効果は、この効果を発見したアーリー(J.Early)にちなんで名付けられています。

本稿では、アーリー効果の発生原因やアーリー電圧の求め方などについて解説していきます。

アーリー効果の発生原因

コレクタ電圧が大きくなりコレクタ-ベース間の逆バイアスが大きくなると、コレクタ-ベース間の空乏層が広がるためベース幅が狭くなります。

アーリー効果の発生原理

これによりベース層内でキャリアが再結合する確率が減少するためhFEが増大します。
ベース幅が変化することで起こるため、 ベース幅変調効果とも呼ばれます。

理想的にはVCE-IC特性はフラットになりますが、アーリー効果によってVCEが大きいほどhFEが増大するため、コレクタ電流が増加する特性となります。

アーリー効果の特性

アーリー電圧とは

アーリー効果によるVCE-IC特性の傾きをグラフの左側へ延長していくと、ベース電流の大小に関わらず1点で交差します。
この電圧をアーリー電圧といい、VAで表します。

アーリー電圧

グラフからアーリー電圧を読み取ると、VA = 67.7Vであることが分かります。
アーリー電圧は絶対値で表します。

出力インピーダンスの計算

上記のようにしてアーリー電圧を求めることで、エミッタ接地回路の出力インピーダンスを計算することができます。
出力インピーダンスはアーリー電圧を用いて、

コレクタ接地の出力インピーダンス

と表せます。

前出のVCE-IC特性では、アーリー電圧:VAは67.7Vと求められています。
例えば、VCE=10V、IB=300uAの時のコレクタ電流:ICはグラフより24mAと読み取れるので、出力インピーダンスを計算すると、

出力インピーダンスの計算

となり、3.24kΩであることが分かります。

MOSFETのアーリー効果

MOSFETの場合、ドレイン電圧が大きくなるとチャネル長が短くなる特性を有しています。
これをチャネル長変調効果といいます。

チャネル長変調効果により、飽和領域でのVDS-ID特性は下図のようにVDSの増大によってIDが増加していきます。

チャネル長変調効果

バイポーラトランジスタのアーリー効果と似た特性を示すことから、チャネル長変調効果をアーリー効果という場合もあります。

動画で電子回路の基礎を学ぶ

Analogistaでは、電子回路の基礎から学習できるセミナー動画を作成しました。

電子の動きをアニメーションを使って解説したり、シミュレーションを使って回路動作を説明し、直感的に理解しやすい内容としています。

これから電子回路を学ぶ必要がある社会人の方、趣味で電子工作を始めたい方におすすめの講座になっています。

電子回路を動画で学ぶ

【内容】

  • 電気回路の基本法則
  • 回路シミュレータの使い方
  • コンデンサ・コイルとインピーダンス
  • フィルタ回路
  • 半導体部品の基礎
  • オペアンプの基礎

この記事のキーワード

関連記事
接地回路の種類と特徴の比較

接地回路とは、トランジスタの3つの端子のうちのどれかを共通端子として使う増幅回路です。 共通端子として使う端子によって回路名が決まります。 バイポーラトランジスタの場合は、 エミッタ接地 コレクタ接地 ベース接地 の3種類があり、MOSFETの場合も同様に ソース接地 ドレイン接…

eFuseとは?

eFuseとは、過電流を検知するとMOSFETをオフして負荷を切断する半導体スイッチICです。 ポリスイッチなどの通常のフューズと置き換えが可能です。 通常のヒューズが負荷切断までに時間がかかるのに対し、eFuseは検知が速く、すぐに切断動作を行えるため、安全性が高いというメリッ…

負性抵抗の原理と回路例

負性抵抗とは、マイナスの抵抗値を持った素子、または回路で、印加する電圧が大きくなると電流が減少するという特性を持っています。 負性抵抗となる素子としては、トンネルダイオードやサイリスタがありますが、本稿ではオペアンプやトランジスタを使った能動的な回路の動作や用途について解説してい…

C級アンプの回路図と動作

C級アンプとは、トランジスタを入力信号の半周期以下のサイクルで導通させる方式です。 そのため歪みが大きくなりますが、効率が良く、理論上の最大効率は90%に達します。 歪みが大きいためオーディオでは使われず、高周波回路で使用されます。 A級、B級、C級、D級アンプの違い INDEX…