トライアックの動作原理と使い方

トライアックとは、ゲート電圧をトリガーとして順方向・逆方向どちらにも導通させることができる半導体スイッチです。
サイリスタを2つ逆方向に並列接続した構造で、直流だけでなく交流も扱えるようになっています。
ゼネラル・エレクトリック社が開発し、Triode AC Switchを略してTRIACと名付けられました。

サイリスタの仕組みと使い方

トライアックの構造

冒頭でも説明した通り、トライアックはサイリスタを2つ逆方向に並列接続した構造をしています。
そのため、回路記号もサイリスタを2つ接続した記号となっています。

トライアックの回路記号

実際の構造は別々に作られているわけではなく、次のようにモノリシックとなっています。

トライアックの構造

このようにサイリスタが2つ構成されています。

トライアックの等価構造、等価回路は次のようになります。

トライアックの等価構造、等価回路

動作原理

トライアックは、ゲートにプラス・マイナスどちらの電圧を印加しても導通させることができます。
さらに、順方向・逆方向どちらにも電流を流せるため動作モード(トリガモード)は4つあります。

トリガモード

トライアックのトリガーモード

動作波形

LTspiceでシミュレーションしてみます。

トライアックのシミュレーション回路 トライアックの動作波形

AC入力に対してゲート信号で導通させるタイミングを制御できていることが分かります。
サイリスタ同様、入力が0Vになると自動的にオフします。
双方向に電流を流すことができるのがサイリスタとの違いです。

トライアックの使用例

トライアックはAC電圧の位相制御ができます。
そのため、以下のような用途で用いられます。

  • 調光器
  • ヒーターの温度制御
  • モーターの回転数制御

トライアックの故障モード

トライアックの故障モードはオープンか短絡のどちらかです。

どちらの場合もゲート電圧による制御が効かず、常にオフ状態、または入出力がショートした状態となります。

使い方による故障原因の多くは、定格を超えた電圧の印加や許容損失を超えた電力を与えた場合です。
特に許容損失は基板の放熱構造にも依存しますので、十分な事前検証が必要となります。

動画で電子回路の基礎を学ぶ

Analogistaでは、電子回路の基礎から学習できるセミナー動画を作成しました。

電子の動きをアニメーションを使って解説したり、シミュレーションを使って回路動作を説明し、直感的に理解しやすい内容としています。

これから電子回路を学ぶ必要がある社会人の方、趣味で電子工作を始めたい方におすすめの講座になっています。

電子回路を動画で学ぶ

【内容】

  • 電気回路の基本法則
  • 回路シミュレータの使い方
  • コンデンサ・コイルとインピーダンス
  • フィルタ回路
  • 半導体部品の基礎
  • オペアンプの基礎

この記事のキーワード

関連記事
サイリスタの仕組みと使い方

サイリスタとは、ゲートに印加された電流をトリガーとしてアノードからカソード側へ電流を流す半導体素子です。 トランジスタと違い、一度ゲートへ電流が印加されるとゲート電流を遮断してもアノードからカソードへ電流が流れ続けるのが特徴です。 SCR(Silicon Controlled R…

能動負荷(アクティブ・ロード)とは?回路と特性について解…

能動負荷とは、電流が一定である非線形抵抗回路で、能動素子(トランジスタ)を使って構成されます。 アクティブ・ロードとも呼ばれます。 抵抗のような受動素子(パッシブ・ロード)との大きな違いは、インピーダンスが非常に大きい(理想的には無限大)であることです。 代表的な回路例としては定…

C級アンプの回路図と動作

C級アンプとは、トランジスタを入力信号の半周期以下のサイクルで導通させる方式です。 そのため歪みが大きくなりますが、効率が良く、理論上の最大効率は90%に達します。 歪みが大きいためオーディオでは使われず、高周波回路で使用されます。 A級、B級、C級、D級アンプの違い INDEX…

TTLレベルとは【代表的なICと回路図】

TTLとは、Transistor Transistor Logicの略で、バイポーラトランジスタで構成されたロジックICのことです。 代表的なのはTI社の7400シリーズの汎用ロジックICです。 TTLレベルとは、TTLの入出力条件のことを指します。 INDEXTTLレベルの規格…

理想ダイオード、ORing回路について解説

理想ダイオードとは、順方向電圧がゼロであり、かつ一方向にのみ電流を流すという特性を持った、理想的なダイオード特性を模擬した半導体ICです。 ダイオードで発生する順方向電圧分の電圧効果や損失を低減することが可能となります。 2電源間のダイオードOR(ORing)の置き換えとしても使…