LEDドライバとは?仕組みや動作原理を基礎から解説
LEDドライバとは、LEDを発光させるための駆動回路です。
LEDドライバの役割には、
- LEDのオン/オフの切り替えを行う
- LEDに供給する電流を制御して一定の明るさに保つ
- 輝度を調整する
などがあります。
LEDを発光させるには?
LEDドライバの説明をする前に、そもそもLEDを発光させるにはどうすればいいかを説明していきます。
LEDは、Light Emitting Diodeの略で、日本語で書くと発光ダイオードです。
通常のダイオードと同様、アノードとカソードがあり、順方向に電流を流すことで発光します。
LEDのVFは色によって異なります。
発光色 | VF |
---|---|
赤色 | 2V前後 |
緑色 | 3V前後 |
青色 | 3.5V前後 |
白色 | 4V前後 |
LEDに流れる電流が大きいほど、輝度が高くなります。
LEDドライバの仕組みと原理
LEDを発光させる最も単純な回路は下図のようになります。
LEDのカソードとGNDの間に抵抗を入れることでLEDに流す電流を決めることができます。
LEDに流れる電流:IFは、
IF = (VIN – VF ) / R
で決まります。
次に、LEDをオン / オフさせるスイッチを追加します。
これがLEDドライバの基本回路になります。
MOSFETのオン抵抗が上流の抵抗に比べ十分小さければ無視できるため、LEDに流れる順方向電流は、前述の計算式で計算できます。
定電流LEDドライバ回路
抵抗によって電流値を決める回路では電源電圧の変化によって電流値が変わり、LEDの輝度も変化してしまいます。
LEDの輝度を一定に保つためには、電源電圧が変化しても常に一定の電流が流れる「定電流回路」で制御します。
定電流回路はオペアンプを使って構成します。
オペアンプはボルテージフォロワとなっており、MOSFETのソース側の電圧がオペアンプの非反転入力端子電圧:Vrefと等しくなるように制御されます。
Vrefは基準電圧源で、ICの場合は内部のBGRを使うことが多いでしょう。
ディスクリートで組む場合は、ツェナーダイオードで定電圧源を生成するのが簡単です。
LEDに流れる電流:IFは、
IF = Vref / R
で決まるため、入力電源電圧に依存せず、一定の電流を流すことができます。
LEDの直列接続と並列接続の違い
ディスプレイのバックライトなどに使用する場合、多数のLEDを駆動する必要があります。
例えば、10個のLEDを駆動する必要がある場合、直列・並列でそれぞれ次のような構成になります。
直列接続の場合、全てのLEDに同じ電流が流れるため、LEDの輝度のばらつきが少なくなるというメリットがあります。
デメリットとしては、入力電源VINに高い電圧が必要になるということです。
VF=3V、Vref=0.5Vとすると、必要なVINは、
VIN = VF × 10 + Vref = 35V
となり、入力電源として昇圧電源が必要になる場合が多いでしょう。
並列接続の場合は、必要となる入力電圧がVF + Vrefだけなので、小型電池などからの駆動も可能になります。
反面、それぞれのストリングにドライバ回路が必要となり、それぞれの電流マッチング精度が悪ければ、LEDの輝度にばらつきが生じてしまいます。
必要な順方向電流×LEDの個数分の電流を入力電源が供給する必要があることもデメリットとなります。
直列、並列のメリット、デメリットをまとめると、以下のようになります。
接続方法 | 直列接続 | 並列接続 |
---|---|---|
メリット | 輝度のばらつきが小さい ドライバ回路が1つでよい 消費電流が少ない |
低い入力電圧で動作可能 1つのストリングに故障が発生しても、他のストリングに影響を与えない |
デメリット | 高い入力電圧が必要 | 各LEDの輝度のばらつきを抑えるのが難しい LED数分のドライバ回路が必要 消費電流が多い |
LEDドライバICの種類
LEDドライバは、電圧を制御する方式により、下記の4つに分かれます。
- リニア型
- 降圧型
- 昇圧型
- 昇降圧型
それぞれの特徴について説明していきます。
リニア型
DCDCコンバータによる制御を行わず、電流制御だけを行うタイプのLEDドライバICです。
最もシンプルな回路で構成されています。
入力電圧が高いと電流制御用MOSFETの損失が大きくなってしまうのがデメリットです。
降圧型
降圧DCDCコンバータ型のLEDドライバICです。
シャント抵抗:Rsで出力電流をモニタし、電流を制御します。
リニア制御型と違い、入力電圧が高くても損失が少ないのがメリットになります。
昇圧型
LEDドライバICで最も多いのがこのタイプです。
出力電圧を昇圧することで、LEDの直列接続数を増やすことができます。
昇圧方式としてはスイッチングレギュレータが主流ですが、チャージポンプで昇圧する製品もあります。
電流シンク側回路を増やして、複数並列接続に対応したものも多くあります。
昇降圧型
昇降圧DCDCCコンバータ型のLEDドライバICです。
入力電圧が高くても低損失で駆動が可能で、入力電圧がLEDの駆動電圧以下になっても昇圧してLEDの発光を維持することができます。
調光とは?
調光とは、LEDの明るさを調整する機能です。
周囲の明るさに応じてスマホのバックライトの輝度を調整したり、LED照明でシーンに合わせて明るさを調整する場合などに使われる機能です。
LEDドライバICでの調光の方式は、アナログ調光とPWM調光に分かれます。
アナログ調光
アナログ調光とは、LEDに流れる電流を調整することで明るさを制御する技術です。
LEDの輝度は下図のように電流を増加させるほど明るくなる特性があります。
したがって、順方向電流を制御することで明るさを変えることができるのです。
上図でも分かるように、電流が少なくなる領域では、電流の変化量に対し光度の変化量が大きいことが分かります。
つまり、電流が小さい領域では調光の分解能が落ちてしまうことになります。
電流の変化に応じて放射光の色温度も変化してしまうこともアナログ調光のデメリットです。
PWM調光
PWM調光とは、LEDに流す電流のパルス幅を変調し、明るさを制御する方式。PWMはPulse Width Modulationの略です。
PWM周波数を数百Hz~数kHzという視認できない周波数で設定することでちらつきを認識できないようにし、1周期間のオン/オフの比(DUTY)を制御することで明るさの制御が可能となります。
DUTYを制御することで、単位時間あたりに流れる電流の平均値が変化し、明るさが変わります。
PWM調光で調整できる最大と最小の明るさの比を調光比と言います。
1周期の時間と最小Hi時間の比で決まり、調光比:Dimratioは以下の式で表されます。
TmaxはPWM周期の最大値、ton_minはPWM信号のHi時間の最小値です。
PWM調光は、LEDの平均電流が変化するだけでLEDに流している電流量は変わらないため、アナログ調光のように色温度が変化することがないというのがメリットになります。
一方、PWM周波数で発生するノイズがEMIの問題を引き起こしたり、調光周波数が可聴周波数まで落ちると、部品や基板の共振による音鳴りが発生することがあります。
通信による制御(I2C、SPI)
LEDドライバICには、I2Cなどの通信機能が搭載された製品も少なくありません。
I2C/SPIによって次のようなものが制御可能です。
- PWM調光
- アナログ調光
- 過電流検知レベル
- スイッチング周波数
- スペクトラム拡散
- フェールセーフ機能