飽和からの復帰時のレギュレータのオーバーシュートに要注意
LDOやDCDCコンバータなどのレギュレータ回路において、入出力飽和状態から復帰の際に大きなオーバーシュートが観測されることがあります。
車載システムでは特にバッテリ電圧の変動幅、スルーレート共に大きくなりますので対策が必要です。
ここでは、電源の飽和復帰時にオーバーシュートが大きくなるメカニズムと対策を紹介していきたいと思います。
レギュレータの飽和とは
降圧レギュレータにおいて、設定した出力電圧より入力電圧が低くなっている状態を飽和状態と呼びます。
出力電圧が設定値より低いためLDOなら出力トランジスタをフルオンさせる側、DCDCコンバータなら最大DUTY動作の状態になっています。
エラーアンプの出力も振り切っている状態です。
下図はLDOの回路例です。
飽和状態から復帰する際にはエラーアンプの出力を制御状態の電圧まで戻す必要があります。
しかし、エラーアンプの出力には位相補償コンデンサが接続されます。
エラーアンプの出力電流は通常数十uA程度ですから、その電流とコンデンサとの時定数で決まる時間分、レギュレータの反応が遅れて大きなオーバーシュートが発生するのです。
オーバーシュート対策
IC内部でオーバーシュート対策を行うためには、
- エラーアンプの出力電流を増やす
- 位相補償コンデンサをできるだけ小さくする
- エラーアンプの出力Hiレベルをクランプする
などが考えられます。
前述のLDOの回路例ではエラーアンプのHiレベルがVBEでクランプされているため、電圧の戻りが速くなっています。
IC外部での対策としては、
- 入力にフィルタを入れ変動S/Rを小さくする
- 出力のパスコン容量を増やす
- 出力にフィルタを入れる
などが考えられます。