トランジスタの動作点とは?求め方、決め方を解説

動作点

トランジスタの動作点とは、ある入力バイアス条件におけるコレクタ-エミッタ間電圧:VCEと、コレクタ電流:ICで決まる点です。
VCE-IC特性と負荷線が交わる点が動作点になります。

本稿では、負荷線を用いた動作点の求め方と、エミッタ接地増幅回路の動作点の決め方について解説していきます。

負荷線とは

下図のエミッタ接地回路を考えます。

エミッタ接地回路

負荷線とは、負荷に流れる電流(=コレクタ電流)とVCの関係を表した直線です。
横軸をVC、縦軸をICとしてグラフに表すとこのようになります。

トランジスタの負荷線

飽和電圧を無視すれば、コレクタ電流:ICはVCが0Vの時に最大となり、IC = VCC / RLとなります。
また、VC = VCCの時に0Aとなります。

トランジスタの飽和領域とは?飽和する原理を解説

動作点の求め方

VCC=10V、RL=100Ωの場合の負荷線をトランジスタのVCE-IC特性に重ねて描きます。

トランジスタの動作点

負荷線とVCE-IC特性が交わる点が動作点です。

例えば、IB=1mAの場合の動作点はVC=5V、IC=50mAであることが分かります。

エミッタ接地増幅回路の動作点を決める手順

実際にエミッタ接地増幅回路の動作点を決める手順を解説していきます。

エミッタ接地回路

出力電圧の振幅をできるだけ大きく取るため、通常はVCの電圧をVCCの半分、つまり5Vとします。

RLが100Ωなので、IC=50mAとなります。
VC=5V、IC=50mAの交点が動作点となります。

エミッタ接地回路の動作点

VBE-IC特性から、IC=50mAとなるVBEを求めると824mVとなります。
これが入力のバイアス電圧になります。

VBE-IC特性

エミッタ接地回路のベースに824mVのバイアスをかけて±20mVのサイン波を入力してみます。

エミッタ接地増幅回路

シミュレーション結果はこのようになります。

増幅波形

出力(VC)の電圧は、5Vを中心に±1.45Vの振幅を持っています。
したがって増幅率は、1.45V / 20mV = 72.5倍となります。

この記事のキーワード

関連記事
アーリー効果とは?メカニズムとアーリー電圧の求め方

アーリー効果とは、コレクタ電圧が高くなることでベース幅が薄くなりhFEが増大する現象です。 これにより、コレクタ-エミッタ間電圧が大きくなるとコレクタ電流が増加するという特性が見られます。 アーリー効果は、この効果を発見したアーリー(J.Early)にちなんで名付けられています。…

A級、B級、C級、D級アンプの違い

A級~D級アンプの違いをまとめました。 クラス 回路図 効率 歪み 用途 A級 ~50% ○ 一般増幅回路オーディオ B級 ~78% × 一般増幅回路オーディオ AB級 ~78% ○ 一般増幅回路オーディオ C級 ~90% × 高周波回路 D級 ~90% × オーディオ INDE…

トランジスタの飽和領域とは?飽和する原理を解説

本稿では、トランジスタの飽和について解説していきます。 バイポーラトランジスタを飽和状態で使用する際に起こる問題点と対策方法を紹介します。 また、バイポーラトランジスタの飽和とMOSFETの飽和の違いについても説明します。 INDEXバイポーラトランジスタの飽和とはなぜ飽和するの…

C級アンプの回路図と動作

C級アンプとは、トランジスタを入力信号の半周期以下のサイクルで導通させる方式です。 そのため歪みが大きくなりますが、効率が良く、理論上の最大効率は90%に達します。 歪みが大きいためオーディオでは使われず、高周波回路で使用されます。 A級、B級、C級、D級アンプの違い INDEX…

差動増幅回路の動作原理

差動増幅回路とは、2つの入力の差電圧を増幅する回路です。 差動増幅器とも呼ばれます。 オペアンプを使った回路では、減算回路とも言われます。 本稿では、トランジスタを使った差動増幅回路とオペアンプを使った回路について、わかりやすく解説していきます。 INDEXトランジスタを使った差…