接地回路の種類と特徴の比較

接地回路とは、トランジスタの3つの端子のうちのどれかを共通端子として使う増幅回路です。
共通端子として使う端子によって回路名が決まります。
バイポーラトランジスタの場合は、

  • エミッタ接地
  • コレクタ接地
  • ベース接地

の3種類があり、MOSFETの場合も同様に

  • ソース接地
  • ドレイン接地
  • ゲート接地

の3種類があります。

バイポーラトランジスタの接地回路の特徴比較

種別 エミッタ接地 コレクタ接地 ベース接地
回路図 エミッタ接地 コレクタ接地 ベース接地
入力インピーダンス 低い 高い 低い
出力インピーダンス 高い 低い 高い
電圧増幅率 高い 約1倍 高い
電流増幅率 高い 高い 約1倍
出力の位相 反転 同相 同相
高周波特性

エミッタ接地

エミッタを共通端子とした増幅回路で、最もよく使われる接地回路です。
電圧、電流利得共に高く、入力インピーダンスが低い、出力インピーダンスが高いという特徴を持ちます。

ベース-コレクタ間の寄生容量にミラー効果が働くため、他の接地回路に比べ高周波側の周波数特性が悪くなります。

エミッタ接地回路の用途は、出力反転回路(インバータ)や、反転増幅回路などです。

エミッタ接地回路の動作原理と設計方法

コレクタ接地(エミッタフォロワ)

コレクタを共通端子とした回路で、増幅率はほぼ1倍です。
入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いため、インピーダンス変換回路(バッファ回路)として用いられます。

コレクタ接地(エミッタフォロワ)回路の動作原理と設計方法

ベース接地

ベースを共通端子とした増幅回路です。
電圧利得が高く、電流利得はほぼ1倍です。

エミッタ接地回路に縦積みしたカスコード回路としてよく使われ、エミッタ接地の高周波特性を改善させます。

MOSFETの接地回路の特徴比較

種別 ソース接地 ドレイン接地 ゲート接地
回路図 ソース接地 ドレイン接地 ゲート接地
入力インピーダンス 高い 高い 低い
出力インピーダンス 高い 低い 高い
電圧増幅率 高い 約1倍 高い
出力の位相 反転 同相 同相
高周波特性

ソース接地

ソースを共通端子とした増幅回路です。
エミッタ接地と同じ用途で使われます。

大きく違うのは、入力がゲートになっているため、バイポーラと違い入力インピーダンスが高いことです。

ミラー効果も同様に効きますが、反転回路として使った場合のオン⇒オフの切り替わりがバイポーラより速いのがメリットです。

ドレイン接地(ソースフォロワ)

ドレインを共通端子とした回路です。
コレクタ接地と同じ用途で使われ、電圧利得はほぼ1倍です。

出力(ソース)が入力に追従することから、ソースフォロワとも呼ばれます。

ゲート接地

ゲートを共通端子とした増幅回路です。
ベース接地と同じ用途で使われます。

動画で電子回路の基礎を学ぶ

Analogistaでは、電子回路の基礎から学習できるセミナー動画を作成しました。

電子の動きをアニメーションを使って解説したり、シミュレーションを使って回路動作を説明し、直感的に理解しやすい内容としています。

これから電子回路を学ぶ必要がある社会人の方、趣味で電子工作を始めたい方におすすめの講座になっています。

電子回路を動画で学ぶ

【内容】

  • 電気回路の基本法則
  • 回路シミュレータの使い方
  • コンデンサ・コイルとインピーダンス
  • フィルタ回路
  • 半導体部品の基礎
  • オペアンプの基礎
関連記事
サレンキー型2次フィルタの特性と設計計算

サレンキー(Sallen-Key)型フィルタとは、VCVS型(電圧制御電圧源型)アクティブフィルタを構成する方法です。 本稿では、サレンキー型の2次ローパスフィルタ、ハイパスフィルタの設計方法や特性について解説していきます。 INDEX2次ローパスフィルタ(LPF)設計計算周波数…

A級、B級、C級、D級アンプの違い

A級~D級アンプの違いをまとめました。 クラス 回路図 効率 歪み 用途 A級 ~50% ○ 一般増幅回路オーディオ B級 ~78% × 一般増幅回路オーディオ AB級 ~78% ○ 一般増幅回路オーディオ C級 ~90% × 高周波回路 D級 ~90% × オーディオ INDE…

サイリスタの仕組みと使い方

サイリスタとは、ゲートに印加された電流をトリガーとしてアノードからカソード側へ電流を流す半導体素子です。 トランジスタと違い、一度ゲートへ電流が印加されるとゲート電流を遮断してもアノードからカソードへ電流が流れ続けるのが特徴です。 SCR(Silicon Controlled R…