ベース接地回路の特徴と用途

ベース接地回路

ベース接地回路とは、バイポーラトランジスタのベースを入出力共通端子とし、エミッタを入力、コレクタを出力として使う回路です。
電圧増幅率が高く、電流増幅作用がない(1倍)という特徴を持ちます。
ベース共通回路、ベースコモン回路とも呼ばれます。

ベース接地回路の特徴

ベース接地回路の入出力の特徴をまとめると以下のようになります。

入力インピーダンス 低い
出力インピーダンス 高い
電圧増幅率 高い
電流増幅率 1倍
出力の位相 同相
高周波特性 良い

入力インピーダンスが低く、出力インピーダンスが高いので、電流バッファ回路として使われます。

ベース接地回路の動作

ベース接地回路の基本の型を示します。

ベース接地回路

動作波形は下図のようになります。

ベース接地動作波形

入力波形:±10mV / 1kHzのサイン波が、33.4倍の振幅に増幅して出力されています。

増幅率の計算

ベース電圧が固定されているので、エミッタ電圧の変動量がそのままVBEの変動量になります。
したがって、コレクタ電流の変動量は、

コレクタ電流計算

で計算できますので、電圧増幅率は次の式で求めることができます。

ベース接地の増幅率計算

今回の回路でGmは、VBE-IC特性より、15.2mA/Vとなります。

VBE-IC特性

よって増幅率は、15.2m × 2.2k = 33.4倍となり、シミュレーション結果と一致します。

ベース接地回路の用途

ベース接地が使われる代表的な回路は、カスコード接続です。
下図のように、エミッタ接地回路の上にベース接地回路が縦積みされた構成となります。

カスコード接続

エミッタ接地単独よりも応答性、周波数特性が改善します。

応答速度の改善効果

ベース接地を用いない、エミッタ接地だけの場合の応答性を確認します。

エミッタ接地の応答性

エミッタ接地の場合、ベース-コレクタ間に存在する寄生容量にミラー効果が作用するため、増幅度倍の容量が作用するため、応答性が悪化します。

ベース接地を追加したカスコード接続にすると、エミッタ接地のコレクタ側の電圧が低い電圧でクランプされるため、ミラー効果の影響を抑えることができます。

ベース接地の応答性

周波数特性

ベース接地の有無で周波数特性を確認してみました。

ベース接地の周波数特性

カットオフ周波数が高周波側に伸びているのが分かります。
ベース接地回路ありの方のゲインが、4MHz付近から急峻に低下しているのは、ベース接地用トランジスタによって2ndポールができるためです。

動画で電子回路の基礎を学ぶ

Analogistaでは、電子回路の基礎から学習できるセミナー動画を作成しました。

電子の動きをアニメーションを使って解説したり、シミュレーションを使って回路動作を説明し、直感的に理解しやすい内容としています。

これから電子回路を学ぶ必要がある社会人の方、趣味で電子工作を始めたい方におすすめの講座になっています。

電子回路を動画で学ぶ

【内容】

  • 電気回路の基本法則
  • 回路シミュレータの使い方
  • コンデンサ・コイルとインピーダンス
  • フィルタ回路
  • 半導体部品の基礎
  • オペアンプの基礎

この記事のキーワード

関連記事
B級プッシュプル増幅回路とAB級アンプの特徴と動作原理

B級増幅回路とは、入力信号の上半分と下半分を別々のトランジスタで増幅して出力する方式です。 A級増幅回路より効率は良くなりますが、歪みが大きくなるのがデメリットです。 AB級増幅回路とは、A級とB級の中間の動作をし、高効率で歪みのない増幅回路です。 本稿では、B級、AB級の回路と…

D級アンプの回路と動作原理

D級アンプとは、スイッチング動作により矩形波を生成し、入力信号レベルに応じてパルス幅を変調して出力する方式です。 スイッチング動作なので効率が良く、90%を超える高効率も可能です。 デジタルアンプ、スイッチングアンプという呼び方もされます。 A級、B級、C級、D級アンプの違い I…

カレントミラー回路の動作原理と設計計算の方法

カレントミラーとは、電流源で作った基準電流をコピー(複製)する回路です。 電流を鏡のように写すことからその名が付けられています。 本稿では、カレントミラーの原理と、ミラー電流の計算方法について解説します。 INDEXカレントミラーの原理出力電流を2倍にする方法1.並列接続する2.…

エミッタ接地回路の特徴と使い方

エミッタ接地回路とは、バイポーラトランジスタのエミッタを入出力共通端子とし、ベースを入力、コレクタを出力として使う増幅回路です。 エミッタ共通回路、エミッタコモン回路とも呼ばれます。 本稿では、エミッタ接地回路の特徴や使い方、計算方法について解説していきます。 INDEX特徴動作…

TTLレベルとは【代表的なICと回路図】

TTLとは、Transistor Transistor Logicの略で、バイポーラトランジスタで構成されたロジックICのことです。 代表的なのはTI社の7400シリーズの汎用ロジックICです。 TTLレベルとは、TTLの入出力条件のことを指します。 INDEXTTLレベルの規格…