パスコンの役割と容量の決め方
パスコンとは、バイパスコンデンサの略で、電源電圧の安定化と高周波ノイズの吸収といった2つの役割があります。
電源とGND間に接続され、ノイズ電流をGNDにバイパスすることからバイパスコンデンサという名前が付けられています。
デカップリングコンデンサと呼ばれることもあります。
電源電圧の安定化の場合は数十μF~数百μF、高周波ノイズ対策には数百pF~0.01uF程度の容量が使われます。
本稿では、パスコンの選定方法について詳しく解説していきます。
電源の安定化
マイコンに電源ICから動作電源を供給する場合を考えます。
マイコンの処理負荷が急に増加した場合、マイコンの消費電流が急峻に増加する場合があります。
消費電流の増加速度が電源ICの応答速度を超えていると、電源電圧が落ち込むことになります。
電源ICが応答するまでの間、不足する電流を供給して電圧の落ち込みを抑えるのがパスコンの役割になります。
電源を供給するデバイスの許容リップル電圧以下になるように容量を選定します。
負荷電流の変動が大きいほど、大きな容量のパスコンが必要になります。
また、負荷電流が大きい場合はESRの小さいセラミックコンデンサが効果的です。
入力の安定化
先程は電源の出力電圧の安定化を考えましたが、入力電源の安定化の用途でもパスコンは使われます。
マイコンの進化に伴い、電源電圧の低下が進んでおり、より高い安定化が必要になってきています。
そのため、電源ICからマイコンまでの配線による電圧低下が無視できなくなってきています。
上記を対策するため、マイコンの電源入力端子直近にも大きな安定化容量が必要になります。
数Aを消費するマイコンでは、数百μFが実装される場合も少なくありません。
パスコンによるノイズ対策
スイッチング電源やデジタル信号などによって発生する高周波ノイズを対策するために、数百pF~0.01uFのセラミックコンデンサを使います。
デバイスから発生するノイズをパスコンを介してGNDへ逃がすことで、ノイズを閉じ込めるという使い方をします。
対策するノイズの周波数に合わせてコンデンサの容量を選ぶ必要がありますので、コンデンサの周波数特性について解説していきます。
コンデンサの周波数特性
ノイズを除去する性能は、インピーダンスが低くなるほど高くなります。
理想的なコンデンサのインピーダンスは、1 / jωCで求められるため、容量が大きいほど、周波数が高いほどインピーダンスが小さくなることが分かります。
しかし、実際のコンデンサには直列に抵抗成分(ESR)とインダクタンス(ESL)が存在します。
これらのLCRの特性によってコンデンサのインピーダンスの周波数特性が決まります。
インピーダンスの谷になっている周波数の帯域で、最もノイズ対策効果が高くなります。
周波数特性は容量によって変わりますが、材質や形状によっても変わります。
そのため、同じ容量、同じメーカーの製品でも型番によって変わるため、使う製品ごとに特性を確認する必要があります。
パスコンの並列接続
パスコンによって、対策できる周波数が異なるため、複数のコンデンサを組み合わせてノイズ対策を行う場合が多くなります。
複数のコンデンサを実装する場合は、ICに近い側から、容量が小さい順に並べるのがポイントです。
小さい容量ほど、配線の抵抗成分やインダクタンス成分の影響を受けやすいためです。
効果的なパスコンの配置
パスコンの配置は、ノイズ対策の効果に大きな影響を与えます。
パスコンは、ICの電源・GNDピンの直近に配置する必要があります。
下記2つの理由で、電源-パスコン-GNDのループを最小限にすることが重要になります。。
1つ目は、配線長を短くすることで配線の寄生ESLの影響を小さくすることができるので、バイパス効果を高めることができます。
2つ目は、ノイズ電流がバイパスされる電流ループが小さくなることで、輻射ノイズを抑えることができます。
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