特性インピーダンスとは?導出・計算方法について解説

特性インピーダンスとは、伝送線路に交流信号が通った時に発生する電圧と電流の比です。
例えば、同軸ケーブルでは特性インピーダンスが50Ωですが、これは抵抗値が50Ωというわけではありません。
DCでのインピーダンスはほぼゼロですが、高周波を通した時には同軸ケーブル内に存在する静電容量とインダクタンス成分によりインピーダンスが高くなります。
このインピーダンスが特性インピーダンスです。

特性インピーダンスの計算式

伝送線路には、電流が形成する磁界によってインダクタンスが、電位差が形成する電界によってキャパシタンスが分布します。
さらに、抵抗成分が直列に、リーク電流の元となるコンダクタンスが線路間に分布します。

これらは導体中に一様に分布しているため、以下のような等価回路で表現されます。

伝送線路の等価回路

この伝送線路の特性インピーダンス:Zoは

特性インピーダンスの計算式

で表されます。
RとGが無視できるほど小さい(無損失)場合、特性インピーダンスは次のようなシンプルな式で計算されます。

特性インピーダンスの計算式

シミュレーションによる動作確認

LTspiceでは、伝送線路の部品が2つ用意されています。

tlineは無損失の伝送線路で、ltlineは損失有の伝送線路です。
今回はtlineを使ってシミュレーションを行います。
tlineには、「遅延時間:Td」と「特性インピーダンス:Z0」が設定できます。

tline

遅延時間の計算

伝送線路を伝わる信号の速度は、

信号の速度

で求められます。
μは透磁率、εは誘電率です。

同軸ケーブルを想定すると、内部の導体は銅、誘電体はポリエチレンとします。
下記の値を使って透磁率、誘電率を求めます。

真空の透磁率:μ0=1.257×10-6
真空の誘電率:ε0=8.854×10-12
銅の比透磁率:μr=1.0
ポリエチレンの比透磁率:εr=2.3

信号の速度は、

信号の速度
信号の速度

ケーブル長を1mとすると、1m進むのにかかる時間が遅延時間になるため、

遅延時間

つまり、遅延時間は5nsとなります。

シミュレーションの実行

tlineの特性を、Td=5ns、Z0=50Ωとしてシミュレーションを行います。

インピーダンス整合のシミュレーション

終端抵抗:RLは、30Ω、50Ω、80Ωとパラメータを振って確認します。

インピーダンス整合のシミュレーション波形

RL=50Ωでインピーダンスの整合が取れ、反射が無くなっていることが確認できました。

動画で電子回路の基礎を学ぶ

Analogistaでは、電子回路の基礎から学習できるセミナー動画を作成しました。

電子の動きをアニメーションを使って解説したり、シミュレーションを使って回路動作を説明し、直感的に理解しやすい内容としています。

これから電子回路を学ぶ必要がある社会人の方、趣味で電子工作を始めたい方におすすめの講座になっています。

電子回路を動画で学ぶ

【内容】

  • 電気回路の基本法則
  • 回路シミュレータの使い方
  • コンデンサ・コイルとインピーダンス
  • フィルタ回路
  • 半導体部品の基礎
  • オペアンプの基礎

この記事のキーワード

関連記事
LDOの基礎から応用まで全てを解説

本記事では、LDOを使った電源設計ができるようになるために必要な全ての知識を、基礎から応用まで分かりやすく解説していきます。 INDEXLDOとは?シリーズレギュレータとの違いスイッチングレギュレータとの違い仕組みと動作原理データシートの見方出力電圧範囲最大出力電流電圧精度出力電…

電気回路におけるコイルの動作、役割

電気回路設計を学ぶ上でコイル(インダクタ)の動作は理解が難しいものの1つです。 本稿では、理論的な部分はあまり語らず、回路動作としてコイルがどのような働きをするかという部分に絞ってわかりやすく解説していきます。 INDEXコイルの特徴、特性電流・電圧特性方形波を印加した場合の挙動…

カットオフ周波数の求め方

カットオフ周波数とは、フィルタ回路において入力信号がそのまま通過する帯域と、減衰される帯域の境目の周波数のことで、ゲインが3dB下がった周波数で定義されます。 カットオフ周波数は、遮断周波数とも呼ばれます。 INDEXカットオフ周波数の計算方法RCフィルタ(一次遅れ系)RLフィル…

入力インピーダンスと出力インピーダンスの関係

入力インピーダンス、出力インピーダンスは電子回路を設計する上で必ず必要になる知識です。 入出力インピーダンスの関係が適切でないと、信号のレベル低下、振幅の減衰が起こり、機器の動作に異常を引き起こす場合があります。 本稿では、入力インピーダンス、出力インピーダンスとは何か、その求め…

ボルテージフォロワとは?オペアンプを使ったバッファ回路

ボルテージフォロワとは、オペアンプを使ったバッファ回路で、インピーダンス変換や回路の分離の用途で使われます。 増幅率が1倍で、入力インピーダンスが大きく、出力インピーダンスが低いという特徴があります。 合わせて学習 オペアンプ回路の基礎と設計計算の方法 INDEXボルテージフォロ…