リチウムイオン電池の仕組みと特性

リチウムイオン電池

リチウムイオン二次電池は扱いが難しく、安全性の高い周辺回路を設計しなければ、異常発熱・発火に繋がる恐れがあります。
安全設計を行うために、まずはリチウムイオン二次電池の仕組みと特性を知っておきましょう。

リチウムイオン電池の構造と仕組み

リチウムイオン電池を構成する主要材料は下記の4つです。

  • 正極材
  • 負極材
  • 電解液
  • セパレータ

正極材にはリチウムを含む遷移金属酸化物、負極材には黒鉛などの炭素材料、電解液にはリチウム塩を溶解させた有機電解液が用いられます。
セパレータには微多孔膜が使用され、正極と負極を隔離しつつ、電解液を保持してリチウムイオンの移動を確保する役割があります。

リチウムイオン電池の構造

充電時は、プラスの電荷を持ったリチウムイオンが正極から負極側へ移動し、負極側へ蓄えられていきます。
これにより正極と負極の間に電位差が発生します。

放電時は負極側から正極側へリチウムイオンが移動し、正極内の電子と結合してリチウム酸化物に還元され、電位差がなくなるように動きます。

リチウムイオン電池の種類と特性

リチウムイオン電池は、正極材に使われる材料で分類されます。
代表的な材料として、コバルト系、マンガン系、リン酸鉄系、NCA系、三元系の5種類があり、それぞれ特性が異なります。

種類 正極材 公称電圧 重量エネルギー密度
コバルト系 コバルト酸リチウム 3.6-3.7 V 150-240 Wh/kg
マンガン系 マンガン酸リチウム 3.7-3.8 V 100-150 Wh/kg
リン酸鉄系 リン酸鉄リチウム 3.2-3.3 V 90-120 Wh/kg
NCA系(ニッケル系) ニッケル酸リチウム 3.6 V 200-260 Wh/kg
三元系(NMC系) ニッケル・マンガン・コバルトの
三元素の化合物
3.6-3.7 V 150-220 Wh/kg

出典元:Wikipedia

リチウムイオン電池のメリット、デメリット

メリット

  • 公称電圧が高い
  • エネルギー密度が高い
  • サイクル寿命が長い
  • 自己放電が少ない
  • メモリー効果がない

ニッカド電池と比較すると、約3倍の電圧が得られ、またエネルギー密度も2倍~4倍得られます。
サイクル寿命も長く、2000回の充放電が可能な製品もあります。

充放電を繰り返すと電池の持ちが悪くなるメモリー効果が無いのもメリットです。

デメリット

リチウムイオン電池のデメリットは、発熱、発火の危険性があるということです。
これは、電解液に有機溶媒を使用しているためです。

発火を防ぐためには、電池の状態の監視、高精度な充電制御、冗長な保護回路が必要となります。
これらの回路は設計難易度が高く、専門知識が必要になります。
また、安全対策によるコストアップもデメリットとなります。

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