ダイオードとは?仕組み、特性、用途について解説
ダイオードとは、電流を一方向にだけ流す電子部品です。
PN接合という構造を持った半導体素子で、電圧をかける向きによって電流が流れたり、流れなかったりします。
この特性を利用して、ACアダプタをはじめ様々な用途で使われています。
ダイオードの動作と使い方
ダイオードの回路記号です。
2端子で構成されていて、それぞれアノード、カソードという名前が付いています。
ダイオードの向きの見分け方
リード部品でも表面実装部品でも、カソード側に印(線)が入っていて向きが分かるようになっています。
ダイオードの動作、役割
ダイオードには極性があります。
アノードの電圧がカソードの電圧より0.6V高くなると、ダイオードは導通して電流を流します。
これを順方向電流といいます。
逆に、0.6V以下になるとダイオードはオフして電流を流さなくなります。
この一方向にしか電流を流さない特性を、ダイオードの整流作用といいます。
ダイオードの等価回路
ダイオードの等価回路は、順方向電流を表す電流源、寄生抵抗、寄生容量で表されます。
寄生容量はpn接合によってできる空乏層が持つ静電容量です。
pn接合、空乏層については後述します。
ダイオードの仕組みと構造
ダイオードはp型半導体とn型半導体を接合したpn接合という領域を持った半導体素子です。
p型半導体とn型半導体を接合すると、p型領域にある正孔はn型の方へ、n型領域にある電子はp型の方へそれぞれ移動します。
すると、接合部付近で正孔と電子が結合して消滅し、キャリアが無い領域ができます。
これを空乏層といい、キャリアが無いため絶縁体と同じ状態になっています。
p型に電圧源の正側を、n型に負側を接続すると、p型領域には正孔が注入され、n型領域には電子が注入されます。
正孔、電子は空乏層側へ移動して結合して消滅しますが、電源からキャリアがどんどん供給されるため、電流が流れ続けます。
この電流を順方向電流と呼びます。
逆に、p型に電源の負側を、n型に正側を接続すると、キャリアはそれぞれ電源端子側に引き寄せられるため電流は流れません。
以上がダイオードの整流作用の原理です。
ダイオードの特性
ダイオードの電流電圧特性と温度特性について解説していきます。
電流電圧特性
ダイオードの電流電圧特性(IV特性)です。
製品によって異なりますが、順方向電圧(VF)が約0.6Vを超えると電流が流れます。
VFが大きくなるほど電流は増加していきます。
逆電圧を加えた場合は理想的には電流はゼロとなりますが、カソードからアノード側へリーク電流(漏れ電流)がわずかに流れます。
リーク電流は高温になるほど大きくなります。
温度特性
ダイオードのVFの温度特性のグラフです。
簡易的に計算する場合は、温度特性を-2mV/℃として計算します。
実際は製品によって差がありますし、温度特性も完全な直線とはなりません。
ダイオードの用途
電子回路でよく使われるダイオードの用途を紹介します。
半端整流回路
交流電源を直流電源に変換する際に使われます。
下図のように交流電圧の上半分だけが出力されるため、半波整流と呼ばれます。
全波整流回路
ダイオードを4つ使った整流回路です。
ダイオードブリッジとも呼ばれます。
半波整流と違い、下図のように交流電圧の両側とも通すため、全波整流と呼ばれています。
電源の逆接防止
電池など、外付けの電源を誤ってプラスマイナス逆に接続してしまうと特に半導体デバイスは壊れてしまう場合がほとんどです。
これを防ぐため、電源の接続端子にダイオードを挿入します。
これによりバッテリが逆接されてもダイオードがオフするため逆電流が流れず、内部回路を保護することができます。
定電圧回路
ダイオードに順方向に電流を流すと、約0.6Vの一定電圧が発生します。
これを利用し、簡易的な定電圧源を作ることができます。
例えば、ダイオードを5つ直列に接続すれば約3Vの電圧源を作ることができます。
並列接続時の注意点
流したい電流に対してダイオードの定格電流が不足していたり、熱損失を分散したい場合などに複数のダイオードを並列接続して使う場合があります。
ダイオードの電流電圧特性が完全に一致していればそれぞれのダイオードに等分の電流が流れるのですが、実際には製造ばらつきがあるため完全に一致することはありません。
特性がばらついた場合、VFが低いダイオードの方に電流が集中することになります。
簡易的な特性図で説明します。
同じ電流を流すならD1の方がVFが低く、同じ電圧を印加すればD1の方が大きい電流を流す特性となっています。
D1とD2を並列接続で使う場合、2つのダイオードのアノードとカソードは直結しているため、VFは同じになります。
したがって、トータルで1A流す場合、同じVFで合計1Aとなる電圧で釣り合うので、D1が600mA、D2が400mAとなりD1に電流が集中することになります。
よってダイオードを並列接続する場合は、ワースト条件でも定格電流を超えないこと、許容損失を超えないことを確認する必要があるのです。
ダイオードの種類
本稿では、主に一般整流ダイオードについて説明してきましたが、電子回路設計では様々な種類のダイオードが使われます。
よく使われるダイオードを以下にまとめてみました。
名称 | 回路記号 | 特徴・用途 |
---|---|---|
整流ダイオード | 交流電源を直流電源に変換する際の整流や、電源が逆接された場合の保護のための逆接保護として使われる | |
スイッチングダイオード | スイッチング回路に使われるダイオードです。ダイオードをオン・オフの切り替えで使うため、一般整流ダイオードより応答速度が速いのが特徴。 | |
ファストリカバリダイオード | オンからオフに切り替わるまでの時間(逆回復時間)が短くなるように不純物(キャリアトラップ)を設けている。 | |
ショットキーダイオード | 金属と半導体との接合を利用したダイオード。順方向電圧が小さく高速スイッチングが可能といった特徴を持つ。 | |
ツェナーダイオード | 逆方向電圧(降伏電圧)を利用して定電圧を生成したり、電圧をクランプしてデバイスを保護するといった用途で使われるダイオード。 |
それぞれのダイオードの詳細は下記のページをご覧ください。
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