ファンアウトの意味と計算方法

ファンアウト

ファンアウトとは、1つのデジタルIC出力に接続できる入力回路の最大数です。
ファンアウトは出力回路の電流能力で決まり、ファンアウトの小さいICの場合、出力信号が減衰してしまって正常に伝達できなくなります。

本稿ではファンアウトの考え方、計算方法について解説していきます。

ファンアウトの考え方

下図のように1つのロジックICの後段に複数のロジックICが接続される場合を考えます。

ファンアウト

このとき後段に接続できるICの数(入力回路の数)の最大値がファンアウトです。

ファンアウトはTTLとCMOSで考え方が異なります。

TTLのファンアウト

TTLの入力をHi、またはLoにするには出力側から電流を流し込む、または引き込む必要があります。

TTLのファンアウト

入力をHiにするために必要な電流はIIH、Loにするために必要な電流はIILとして規定されています。

出力側には最大ソース電流:IOH、最大シンク電流:IOLが規定されています。

ファンアウトは入力電流と出力電流の比で決まり、以下の式で計算できます。

FANOUT = IOH / IIH(出力Hi時)

FANOUT = IOL / IIL(出力Lo時)

IIHが20μA、IOHが1mAであれば、ファンアウトは50と計算することができます。

ファンアウトを超える数の出力回路を接続してしまった場合、出力信号が鈍ってしまったり、減衰したりします。

CMOSのファンアウト

CMOSの場合は入力に電流が流れないため電流能力を考える必要はありませんが、入力側の入力容量による立ち上がり/立ち下がり時間の遅れを考慮する必要があります。

CMOSのファンアウト

通常、CMOSロジックICには出力遷移時間(Hi⇔Loになるまでの時間)が規定されています。
その条件として出力に接続する負荷容量:CLも規定されています。

遷移時間

つまり、CLを超える容量が入力側に付加されていると、データシートで規定された遷移時間を守れないということになります。

これより、CMOSのファンアウトは入力容量:CINと負荷容量:CLの比で決まり、以下の式で計算できます。

FANOUT = CL / CIN

CINが5pF、CLが50pFであれば、ファンアウトは10となります。

この記事のキーワード

関連記事
TTLレベルとは【代表的なICと回路図】

TTLとは、Transistor Transistor Logicの略で、バイポーラトランジスタで構成されたロジックICのことです。 代表的なのはTI社の7400シリーズの汎用ロジックICです。 TTLレベルとは、TTLの入出力条件のことを指します。 INDEXTTLレベルの規格…

ワイヤードORとは?回路例と禁止されている接続方法

ワイヤードORとは、複数の信号を接続してOR(またはNOR)論理で出力する方法です。 ダイオードやオープンドレイン(オープンコレクタ)を使って実現します。 それぞれの回路例について解説していきます。 INDEXダイオードを使ったワイヤードOR回路オープンドレインを使ったワイヤード…

CMOSレベルとは?TTLレベルとの違い

CMOSレベルとは、一般的なCMOSロジックICの入出力条件です。 TTLレベルと違い、電源電圧:VDDに依存します。 TTLレベルとは【代表的なICと回路図】 CMOSレベルの規格 CMOSレベルの一般的な規格は下記のようになります。 Hiレベル入力電圧 0.7×VDD Loレ…

フリップフロップ回路とは?種類とそれぞれの動作をわかりや…

フリップフロップとは、1ビットの情報を保持できる論理回路で、過去の入力によって決まった状態と現在の入力によって出力が決まる順序回路の一つです。 過去の入力情報を保持して記憶することができるため、記憶回路、または記憶素子とも呼ばれます。 ANDやORなどの組み合わせ回路との違いは、…

排他的論理和(XOR)回路とは

排他的論理和(XOR)は、2つの入力が等しい場合は0を、異なっている場合は1を出力する演算、または論理回路のことです。 「2つの内、どちらか一方だけが正しい」ことを判別します。 XORはエクスクルーシブオアと読みます。 EX-ORと表記される場合もあります。 INDEX回路図、回…