入力インピーダンスと出力インピーダンスの関係

入力インピーダンス、出力インピーダンス

入力インピーダンス、出力インピーダンスは電子回路を設計する上で必ず必要になる知識です。
入出力インピーダンスの関係が適切でないと、信号のレベル低下、振幅の減衰が起こり、機器の動作に異常を引き起こす場合があります。

本稿では、入力インピーダンス、出力インピーダンスとは何か、その求め方と適切な関係に設定する方法について解説していきます。

インピーダンスとは?わかりやすく解説

出力インピーダンスとは

あるデバイスの出力側から見たインピーダンスです。
デバイスの内部抵抗と考えることもできます。
出力インピーダンスの値は出力電流変化に対してどれだけ出力電圧が変動したかで計算できます。
例えば、出力電流が1mA増えた時に出力電圧が1V低下したとすると、出力インピーダンスは1V / 1mA = 1kΩとなります。

出力インピーダンス 出力インピーダンスの値

負帰還がかかっている電源やオペアンプでは出力インピーダンスは非常に小さくなります。
逆に、コンパレータやOTAなど小信号を出力する回路の出力インピーダンスは大きくなります。

出力インピーダンスの求め方

出力インピーダンスは、テブナンの定理で等価回路に書き換えて考えます。

出力インピーダンス_テブナンの定理

上図の場合、出力インピーダンスはR1とR2の並列合成抵抗であることが分かります。

ここまでが基本的な考え方ですが、実際の回路で考えてみましょう。
下図のようなドレイン接地の出力回路を考えます。

ドレイン接地

MOSFETがオフの場合は出力インピーダンスはプルアップ抵抗だけで決まりますので、出力インピーダンスは10kΩとなります。
MOSFETがオンの場合は等価回路は下図のようになります。

出力インピーダンス計算

出力インピーダンスはプルアップ抵抗とオン抵抗の並列合成抵抗となるので、99Ωと計算できます。

厳密に計算するとこのようになりますが、大抵の場合プルアップ抵抗よりオン抵抗の方が十分小さいので、MOSFETオン時の出力インピーダンス=オン抵抗と考えて問題ありません。

入力インピーダンスとは

あるデバイスの入力側から見たインピーダンスです。
入力インピーダンスの値は入力電圧変化に対してどれだけ入力電流が変動したかで計算できます。
例えば、入力電圧が0.1V上昇した時に入力電流が1μA増加したとすると、入力インピーダンスは0.1V / 1μA = 100kΩとなります。

入力インピーダンス 入力インピーダンス計算

入力インピーダンスの求め方

多くの場合、受け側回路はMOSFETのゲートなど、インピーダンスの高い回路で受けます。
しかし、インピーダンスが高すぎるとノイズに弱くなるため、大抵の場合プルダウン抵抗が付加されています。

入力インピーダンス

したがって、入力インピーダンスはプルダウン抵抗の値で決まることがほとんどです。

複雑な電子回路では、1つの出力デバイスに対して複数の入力デバイスが接続されます。
この場合、入力インピーダンスは全ての入力デバイスの入力インピーダンスの合成抵抗となります。

入力インピーダンス計算

入出力インピーダンスが与える影響

ここまでは入出力インピーダンスをそれぞれ考えてきましたが、入力デバイスと出力デバイスを接続した時に入出力インピーダンスがどのような影響を与えるか考えています。

入出力インピーダンスはロー出しハイ受けとよく言われます。
この意味は、低いインピーダンスで出力し、入力側を高いインピーダンス回路で受けるということです。

ロー出しハイ受けにすることで、出力インピーダンスと入力インピーダンスの抵抗分圧による信号の減衰を小さくすることができるのです。

入出力インピーダンスの影響

この例のように、入力:VinはRoとRinによって分圧され、Voutは次のようになります。

入出力インピーダンスによる分圧

出力インピーダンスは低いほど良く、入力インピーダンスは高いほど良いことが分かります。

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