定電流源回路の仕組みと設計方法

定電流源とは、負荷のインピーダンスに関係なく一定の電流を流し続ける回路です。
内部抵抗が大きい(理想的には無限大)ため、負荷の変動によって電圧が変動します。

本稿では定電流源の仕組みと回路例、設計方法をご紹介していきます。

定電流源の仕組み

下図のように、負荷に対して一定の電流を流す定電流回路を考えます。

定電流源

電圧はオームの法則より

V = I × R

で決まります。
電流は負荷が変化しても一定ですので、電圧はRに比例した値になります。

したがって、負荷に対する電流、電圧の関係は下図のように表されます。

電流源と負荷、電圧の関係

電流源の内部抵抗は、

r = Δ( VCC – V ) / ΔI

で計算できます。

理想的な電流源の場合、電流は完全に一定ですので、ΔI=0となります。
したがって、内部抵抗は無限大となります。

しかし、実際には内部抵抗は有限の値を持ちます。
そのため、電源電圧によって電流値に誤差が発生します。

電流源の内部抵抗による影響

上図のように、負荷に流れる電流には(VCC-Vo)/rの誤差が発生することになります。

定電流源回路

定電流源回路の作り方について、3つの方法を解説していきます。

電圧電流変換回路

VI変換(電圧電流変換)を利用した定電流源回路を紹介します。
主に回路内部で小信号制御用に使われます。

トランジスタを使った簡易回路

定電流源回路

トランジスタのダイオード接続を2つ使って、2VBEの定電圧源を作ります。
2VBE電圧源からベース接地でトランジスタを接続し、エミッタ側に抵抗を設置します。

これにより、抵抗:RSにはVBE/RSの電流が流れます。
この電流をカレントミラーで折り返し、負荷へ出力します。

簡単に構成できますが、温度による影響を大きく受けるため、精度は良くありません。

オペアンプを使った電流源

精度を改善するため、オペアンプを使って構成します。

定電流源回路

基準電源として、温度特性の良いツェナーダイオードを選定すれば、精度が改善されます。
また、高精度な電圧源があれば、それを基準としても良いでしょう。

オペアンプの出力にNPNトランジスタを接続して、VI変換を行います。
トランジスタのエミッタ側からフィードバックを取り基準電圧を比較することで、エミッタ電圧がVzと等しくなるように電流が制御されます。
抵抗:RSに流れる電流は、Vz/RSとなります。

この電流をカレントミラーで折り返して出力します。

フィードバック制御

出力電流を直接モニタしてフィードバック制御を行う方法です。
大きな電流を扱う場合に使われることが多いでしょう。

定電流源回路

シャント抵抗:RSで、出力される電流をモニタします。
オペアンプの-端子には、I1とR1で生成した基準電圧が入力されます。
I1はこれまでに紹介したVI変換回路で作られることが多いでしょう。

オペアンプの+端子には、VCCからRSで低下した電圧が入力されます。

よって、R1で発生する電圧降下:I1×R1とRSで発生する電圧降下:Iout×RSが等しくなるように制御されます。
したがって、出力電流:Ioutは

Iout = ( I1 × R1 ) / RS

で計算されます。

この記事のキーワード

関連記事
カットオフ周波数の求め方

カットオフ周波数とは、フィルタ回路において入力信号がそのまま通過する帯域と、減衰される帯域の境目の周波数のことで、ゲインが3dB下がった周波数で定義されます。 カットオフ周波数は、遮断周波数とも呼ばれます。 INDEXカットオフ周波数の計算方法RCフィルタ(一次遅れ系)RLフィル…

インピーダンス整合(インピーダンスマッチング)のやり方

インピーダンス整合とは、入力側と出力側のインピーダンスを合わせることです。 インピーダンスマッチングとも呼ばれます。 低周波回路では、負荷に与える電力を最大化することが目的で、高周波回路では信号の反射によって生じるリンギング・ノイズを抑えることが目的です。 INDEX低周波回路の…

インピーダンスとは?わかりやすく解説

インピーダンスとは、交流回路における電流の流れにくさを数値化したもので、電圧と電流の比を表します。 単位はΩで、直流回路の抵抗の考え方を複素数にまで広げたものです。 複素数の概念が出てくることで分かりにくくなってしまいますが、ここではインピーダンスとは何なのか、抵抗との違いは何な…

コレクタ接地(エミッタフォロワ)回路の特徴と使い方

コレクタ接地回路とは、バイポーラトランジスタのコレクタを入出力共通端子とし、ベースを入力、エミッタを出力として使う回路です。 電流増幅率が高く、電圧増幅作用がない(1倍)という特徴を持ちます。 出力(エミッタ)が入力電圧に追従することから、エミッタフォロワとも呼ばれます。 本稿で…

サレンキー型2次フィルタの特性と設計計算

サレンキー(Sallen-Key)型フィルタとは、VCVS型(電圧制御電圧源型)アクティブフィルタを構成する方法です。 本稿では、サレンキー型の2次ローパスフィルタ、ハイパスフィルタの設計方法や特性について解説していきます。 INDEX2次ローパスフィルタ(LPF)設計計算周波数…