ボルテージフォロワとは?オペアンプを使ったバッファ回路

ボルテージフォロワ

ボルテージフォロワとは、オペアンプを使ったバッファ回路で、インピーダンス変換や回路の分離の用途で使われます。
増幅率が1倍で、入力インピーダンスが大きく、出力インピーダンスが低いという特徴があります。

ボルテージフォロワの動作原理

ボルテージフォロワはオペアンプの反転入力端子と出力をショートして使います。

ボルテージフォロワ回路

増幅率(利得)は1倍となり、入力された電圧がそのまま出力されます。

ボルテージフォロワ波形

出力がそのまま反転入力端子に返ってくるため、VOUTがV+より高くなると出力電圧を下げようとフィードバックがかかり、VOUTがV+より低くなると出力電圧を上げようとフィードバックがかかります。
結果、VOUT=V+となるように制御されます。

これがボルテージフォロワの動作原理です。

ボルテージフォロワの役割と用途

ボルテージフォロワの役割は、高いインピーダンスを低いインピーダンスに変換することです。

インピーダンス変換の例

出力インピーダンスが1kΩある信号源があるとします。

インピーダンス変換

この信号源で1kΩのインピーダンスの負荷を駆動させようとすると、信号源の出力インピーダンスの1kΩと抵抗分圧され、負荷には半分の電圧しか印加されないことになります(B点電圧)。

インピーダンス変換

ボルテージフォロワを使うことで、この問題が解決できます。

ボルテージフォロワによるインピーダンス変換 ボルテージフォロワによるインピーダンス変換

オペアンプは入力インピーダンスが非常に高いため、1kΩとの分圧はほとんど無視でき、B点の電圧Hiレベルは5Vのままです。
また、オペアンプの出力インピーダンスが低いため、1kΩの負荷であれば電圧降下がほとんどなく、負荷に5Vを印加することができます(C点電圧)。

つまり、1kΩの出力インピーダンスを、ほぼゼロに変換したということになります。

電圧源として使う

抵抗分圧で決めた電圧を出力する簡易的な方法として、エミッタフォロワ回路が使われます。

エミッタフォロワ

しかし、この回路ではトランジスタのVFによる影響と、ベース電流による電圧降下が発生するため、出力電圧精度がよくありません。
そこで、エミッタフォロワの代わりにボルテージフォロワを使うことで、高精度な電圧源を作ることができます。

ボルテージフォロワによる電圧源

ボルテージフォロワの発振対策

ボルテージフォロワは発振しやすいと言われますが、その理由は反転増幅回路に比べオープンループゲインが高くなるためです。
ボルテージフォロワが発振するパターンとして下記2つがあります。

  1. ボルテージフォロワに対応していないオペアンプを選んでいる
  2. 負荷容量が大きい

それぞれについて対策を説明していきます。

1.ボルテージフォロワに対応していないオペアンプを選んでいる

位相余裕度が十分取れていない設計になっているオペアンプでは、ボルテージフォロワで使うと発振する場合があります。
そのようなオペアンプの場合、ボルテージフォロワでの使用が推奨されていませんので、オペアンプを選ぶ際にはデータシートをしっかり確認しましょう。

どうしてもICを変更できない場合は、出力を抵抗分圧して反転入力端子に接続することで、オープンループゲインを落として発振を防止できる可能性があります。

ボルテージフォロワの発振対策

入力信号も同じ分圧比で分割してから増幅させることで、元の信号と同じ信号を出力できます。

ボルテージフォロワの発振対策

対策前の周波数特性では、オープンループゲインが138dBあり、位相余裕は-5°で発振しています。

ボルテージフォロワの周波数特性

対策後は、ゲインが1/10になるので、オープンループゲインが118dBとなっており、位相余裕も21°まで改善しています。

ボルテージフォロワ発振対策

ただし、わざわざ減衰させてから増幅するので、電圧精度が悪化します。
また、減衰させすぎると同相入力電圧範囲の下限に当たり、単電源では動作できなくなりますので注意が必要です。

2.負荷容量が大きい

通常、オペアンプは内部の位相補償回路で1stポールを生成しており、2ndポールが回る前にゲインが0dBになるように調整されています。
しかし、負荷容量が大きいと、低い周波数に2ndポールができてしまい、ゲインが0dBになる前に位相が回って発振してしまいます。

ボルテージフォロワの発振

対策としては、負荷容量に直列に抵抗(疑似ESR)を挿入する方法があります。

ボルテージフォロワの発振対策

負荷容量と疑似ESRでゼロを形成して位相を戻すことで、位相余裕度が改善されます。

ボルテージフォロワの発振対策

ポール、ゼロについて分かりやすく解説

デメリットは出力のノイズ性能が悪化することです。

この記事のキーワード

関連記事
インピーダンス整合(インピーダンスマッチング)のやり方

インピーダンス整合とは、入力側と出力側のインピーダンスを合わせることです。 インピーダンスマッチングとも呼ばれます。 低周波回路では、負荷に与える電力を最大化することが目的で、高周波回路では信号の反射によって生じるリンギング・ノイズを抑えることが目的です。 INDEX低周波回路の…

入力インピーダンスと出力インピーダンスの関係

入力インピーダンス、出力インピーダンスは電子回路を設計する上で必ず必要になる知識です。 入出力インピーダンスの関係が適切でないと、信号のレベル低下、振幅の減衰が起こり、機器の動作に異常を引き起こす場合があります。 本稿では、入力インピーダンス、出力インピーダンスとは何か、その求め…

オペアンプを使った積分回路の原理と動作波形、用途について…

積分回路(積分器)とは、入力波形を時間積分した電圧を出力する回路です。 積分回路の用途としてはローパスフィルタやノイズ除去回路などがあります。 CR回路によるローパスフィルタやノイズ除去回路に比べて、出力インピーダンスが低いことと、入力側が出力側に繋がる回路の影響を受けないという…

サレンキー型3次フィルタの特性と設計計算

前回はサレンキー型2次フィルタについて解説しましたので、本稿ではサレンキー型の3次ローパスフィルタ、ハイパスフィルタの設計方法や特性について解説していきます。 サレンキー型2次フィルタの特性と設計計算 INDEX3次ローパスフィルタ(LPF)設計計算周波数特性3次ハイパスフィルタ…

サレンキー型2次フィルタの特性と設計計算

サレンキー(Sallen-Key)型フィルタとは、VCVS型(電圧制御電圧源型)アクティブフィルタを構成する方法です。 本稿では、サレンキー型の2次ローパスフィルタ、ハイパスフィルタの設計方法や特性について解説していきます。 INDEX2次ローパスフィルタ(LPF)設計計算周波数…