シリーズレギュレータの内部回路と動作原理を解説

シリーズレギュレータの内部回路と動作原理

シリーズレギュレータ(LDO)の基本的な内部回路の紹介と動作原理について解説していきます。

ブロック図と内部回路

シリーズレギュレータの等価回路は下図のようなブロック図で表すことができます。

シリーズレギュレータのブロック図

大まかな構成部品は、

  • 基準電圧源
  • 差動増幅器
  • 位相補償回路
  • 増幅段
  • パワートランジスタ
  • フィードバック部

となります。

これをトランジスタレベルで描くと下図のような内部回路になります。

シリーズレギュレータの内部回路

※実際にシミュレーションで動作を確認したい方は、下記より回路図をダウンロードしてLTspiceで読み込んでください。

ダウンロード
シリーズレギュレータの回路図(LTspiceのascファイル)
※上記ファイルをダウンロードした時点で利用規約に同意したものとみなします。

動作原理

前記の回路図で入力電源を0V⇒5Vにスイープさせて動作を確認します。

シリーズレギュレータの動作原理

出力電圧は3.3V設定のため、入力電圧が3.3Vよりも低い領域では差動増幅器の入力電圧は基準電圧側(右側)が高い状態となります。
電流は差動対の左側に全て流れ、電流増幅段のトランジスタQ10のベースへ流れ込みます。

これによりQ10はフルオンして電流を引き込み、パワートランジスタが飽和し、VIN≒VOUTの状態が継続します。

VINが3.3Vより高くなるとVOUT=3.3Vで固定され、制御領域に入ります。

この状態では、オペアンプのバーチャルショートの考え方と同様で、差動対の両方の入力電圧が等しい状態です。

ですが、実際には差動対の左側の電圧がやや低くなります。
出力に必要な電流をドライブするため、差動対を左側へ傾け、電流増幅回路を経由してパワートランジスタのベース電流を供給するためです。

出力電流をスイープさせたシミュレーション波形が下図になります。

ロードレギュレーションの発生メカニズム

出力電流が大きいほど差動対の左側の電圧を低くする必要があるので、出力電流が大きいほど出力電圧が低下することになります。
これがロードレギュレーションが発生するメカニズムです。

回路の増幅率が高いほど差動対の差電圧は小さくて済むため、ロードレギュレーションは小さくなります。
バーチャルショートは増幅率が無限大という理想条件で考えているため、差動入力の差がゼロと考えることができるのです。

この記事のキーワード

関連記事
スイッチングレギュレータの位相補償のやり方と位相余裕の計…

スイッチングレギュレータ(DCDCコンバータ)の位相余裕を計算するのはそれほど難しくはありません。 伝達関数を使うので少し取っ付きにくいイメージがありますが、コツさえつかめば簡単です。 計算用のエクセルシートもご用意しましたので、数値を変えながらボーデ線図の変化を確認すればイメー…

過電圧保護とは?回路構成と機能を解説

過電圧保護とは、外部からのサージ電圧から内部回路を守るための回路、またはデバイスの異常で出力が過電圧状態になった際に後段デバイスを保護するための機能です。 OVP(Over Voltage Protection)と呼ばれたり、OVLO(Over Voltage Lock Out)…

飽和からの復帰時のレギュレータのオーバーシュートに要注意

LDOやDCDCコンバータなどのレギュレータ回路において、入出力飽和状態から復帰の際に大きなオーバーシュートが観測されることがあります。 車載システムでは特にバッテリ電圧の変動幅、スルーレート共に大きくなりますので対策が必要です。 ここでは、電源の飽和復帰時にオーバーシュートが大…

シャントレギュレータの動作原理と使い方

シャントレギュレータとは、一定の電圧を出力する定電圧源で、電圧制御用のトランジスタが負荷と並列に入るものを言います。 上流に設置された抵抗を介して電流を引き込むことで電圧降下を発生させ、一定の電圧になるように電流値を制御します。 代表的なICに、TL431などがあります。 IND…

オペアンプを使った積分回路の原理と動作波形、用途について…

積分回路(積分器)とは、入力波形を時間積分した電圧を出力する回路です。 積分回路の用途としてはローパスフィルタやノイズ除去回路などがあります。 CR回路によるローパスフィルタやノイズ除去回路に比べて、出力インピーダンスが低いことと、入力側が出力側に繋がる回路の影響を受けないという…