シャントレギュレータの動作原理と使い方
シャントレギュレータとは、一定の電圧を出力する定電圧源で、電圧制御用のトランジスタが負荷と並列に入るものを言います。
上流に設置された抵抗を介して電流を引き込むことで電圧降下を発生させ、一定の電圧になるように電流値を制御します。
代表的なICに、TL431などがあります。
シャントレギュレータの動作原理
シャントレギュレータはツェナーダイオードのような働きをするため、ツェナーダイオードから3端子出ているような概略図で描かれることが多いですが、実際の内部回路にツェナーダイオードが使われているわけではありません。
内部回路は、基準電圧源とアンプで構成されています。
設計計算
バーチャルショートの考え方で、Ref端子の電圧が内部基準電圧源の電圧:Vrefに等しくなるようにフィードバック制御されます。
したがって、出力電圧:VOUTは、
VOUT = Vref × (R1 + R2 ) / R2
となります。
一方、電圧降下用抵抗と電流の関係からVOUTを計算すると、
VOUT = VIN – Rs × (Is + Iout)
となります。
つまり、R1とR2で設定したVOUTの電圧になるように、Isを制御してRsによる電圧降下を調整するという動作になります。
負荷電流が大きければIsを小さくし、負荷電流が少なければIsを大きくしてVOUTが一定の電圧になるように制御されます。
シャントレギュレータとシリーズレギュレータの違い
シャントレギュレータは負荷と並列に電圧調整素子(トランジスタ)が配置されますが、シリーズレギュレータ(LDO)はその名の通り負荷と直列(シリーズ)にトランジスタが配置されます。
シリーズレギュレータ(LDO)についての詳細は、下記記事をご参照ください。
シャントレギュレータの用途
シャントレギュレータの用途として代表的なものをいくつか挙げていきたいと思います。
基準電圧源、定電圧源
最も基本的な使い方が基準電圧源、定電圧源として使う方法です。
ツェナーダイオードよりも電圧が安定しているので、高精度な基準電圧源として使えます。
定電流源
LEDなどに一定の電流を流す場合の定電流源を設計するために使えます。
定電流値:Icは、Ic = Vref / Rc で計算できます。
シリーズレギュレータ
シャントレギュレータでパワートランジスタをドライブすることで、シリーズレギュレータを構成することができます。
出力電圧:VOUTが上昇すると、カソード端子が吸い込む電流:Icを増加させるため、カソード端子電圧が低下し、出力電圧が下がります。
よって、負帰還がかかり一定電圧を出力することができます。
出力電圧:VOUTは、VOUT = Vref × (R1 + R2 ) / R2 で計算できます。
電流制限回路
一定電流以上流れないようにする電流リミット回路です。
アノード端子とRef端子の電位差:Vrefを使って電流制限値を決めます。
電流制限値:I_limは、I_lim = Vref / Rcl で決まります。
制限値に達するまでは、カソードは電流を引き込まないため、NPNトランジスタはオン状態です。
制限値を超えるとカソードが電流を引き込み、NPNトランジスタのベース電圧を引き下げて電流を流さないように働きます。
これにより負帰還がかかるため、設定した値以上の電流が流れないように制御されます。
シャントレギュレータの代わりにトランジスタを使った電流制限回路もありますが、シャントレギュレータを使う方が高精度化できます。
フォトカプラ駆動回路
AC/DCコンバータなどの絶縁回路でフォトカプラを使用する場合の駆動回路です。
出力電圧は、VOUT = Vref × (R1 + R2 ) / R2 で計算できます。
カソード端子からフォトカプラを通して電流が引き込まれます。
フォトカプラを通った電流は、一次側へ出力され、レギュレータの基準電圧を生成します。
Cpは位相補償コンデンサで、Cpと直列に抵抗を入れてゼロを形成して発振を止める場合もあります。