A級増幅回路(A級アンプ)の動作原理
A級増幅回路とは、オペアンプなどの増幅回路に使われる出力段回路の1つの形式で、入力に対し出力がリニアに変化します。
歪が少ない出力が得られますが、効率が悪いため発熱が大きくなるというデメリットがあります。
この方式を使ったオーディオアンプは、A級アンプ、クラスAアンプと呼ばれます。
A級増幅回路の回路図
A級増幅回路は、エミッタフォロワ、またはエミッタ接地型が基本となります。
エミッタフォロワタイプのA級増幅回路
エミッタ接地タイプのA級増幅回路
A級増幅回路の動作原理
A級増幅回路では、定電流源による電流:Iccが常に流れている状態です。
トランジスタ側でエミッタ電流:Ieを調整することで、負荷側に必要な電流を供給します。
Iccが常に流れているため消費電流が大きくなり、損失も大きくなります。
これがA級アンプの効率が悪いと言われる理由です。
1つのトランジスタで制御するため切り替わりによる歪がなく、入力波形に対し出力波形の歪がありません。
A級アンプは音がいいと言われるのはこれが理由です。
A級増幅回路の入出力波形
バイアスと動作点
エミッタ接地型の場合は、入力のバイアス電圧と出力の動作点を考える必要があります。
まず、トランジスタのVBE-IC特性を確認します。
直線性の高い範囲で使うことで歪が少なくなります。
今回は、VBE=0.82Vをバイアス電圧とします。
次に動作点を決めます。
電源電圧を5Vとすると、中点を動作点とすると最も大きな振幅を取れます。
VBE-IC特性より、VBE=0.82V時のコレクタ電流は0.241Aなので、コレクタ抵抗を10Ωとすると、動作点は、5V – 0.241 × 10 = 2.59Vとなり、ほぼ中点の電圧となります。
上記回路図でシミュレーションを行った結果です。
A級増幅回路の効率
A級増幅回路の効率は最大50%となります。
エミッタ接地回路で、動作点を電源:VCCの1/2として考えます。
DCの入力電力は、
コレクタ電圧:Vcの実効値は、
コレクタ電流:Icの実効値は、
よって、ACの消費電力は、
以上より効率:ηは、
となり、効率が50%であることが分かります。
これは理想条件であり、実際にはトランジスタの飽和電圧によるロスなどもあるため、効率は50%以下となります。