TVSダイオードとは?使い方、選び方を解説
TVSとは、Transient Voltage Suppressorの略で、外部から入力されたサージ電圧から内部回路を保護するための素子です。
ツェナーダイオードの一種で、サージ電圧を一定以下に抑制することができるため、ピーク電圧を抑制することができます。
TVSの特性
TVSには単方向(片方向)のものと双方向のものがあります。
単方向TVSの電流電圧特性は以下のようになります。
単方向の場合は逆電圧を使って正サージ電圧をクランプすることになります。
負サージは順方向でクランプすることになるので、通常動作時に正電圧のみで動作させるシステムに使われます。
双方向TVSの電流電圧特性は以下のようになります。
単方向TVSを2つ逆方向に接続した形になっているので、正負両方の電圧でクランプできます。
したがって、通常動作時に負電圧も印加されるようなシステムの保護に使われます。
TVSの用途
TVSは、下図のようにサージ電圧が印加される可能性がある端子付近に設置されます。
静電気などの大きな電圧が印加が印加されると、TVSがブレイクダウンし、GND側へ大きな電流を流します。
これによりTVSがサージ電圧のエネルギーを吸収することができるので、内部にはTVSのブレイク電圧以上の電圧は印加されません。
TVSの選び方
TVSを選ぶ際には、下記特性を確認する必要があります。
スタンドオフ電圧:VR
TVSがブレイクダウンしない最大の電圧です。
システムが動作する最大電圧よりVRの方が高くなるようにする必要があります。
最大ピーク電流:IPP
ブレイクダウン時に許容できる最大電流です。
サージ印加時のピーク電流がIPP以下になるようにする必要があります。
最大クランプ電圧:VC
IPPの電流が流れた時のブレイクダウン電圧です。
VCはシステムの絶対最大定格以下になるようにする必要があります。
サージ逆電力:PPPM
サージ印加時に許容できる電力です。
PPPM = VC × IPP
で求められますが、規格値としては余裕を持った値で規定されています。
ESD試験をシミュレーション
LTspiceを使って、ESD試験をシミュレーションし、TVSの動作を確認してみましょう。
HBM試験を模擬し、容量が150pF、放電抵抗を330Ω、電圧を4000Vとして下図のような回路でシミュレーションします。
TVSはLittelfuseのSMBJ24CAで、スタンドオフ電圧は24Vです。
結果はこのようになります。
VCは約36V、IPPは約12Aとなりました。
故障モード
サージ電圧が印加された際に、TVSの規格を超える電圧・電流が印加されると、ショート状態で破壊します。
また、ショート破壊後の大電流によりボンディングワイヤが切れて、オープン状態での故障になることも考えられます。
ツェナーダイオードとの違い
冒頭にも述べた通り、TVSはツェナーダイオードの一種です。
設計現場では、ツェナーダイオードと言うと、IC単体の過電圧保護や基準となる定電圧源として使われることがほとんどです。
流す電流も数mA程度までで、小電力のものを指します。
一方TVSは、これまでに説明した通りシステム全体を保護する目的で使われ、大電流・大電力のものを指します。
バリスタとの違い
バリスタは、半導体セラミックスを電極で挟み込んで作った2端子の素子です。
バリスタの両端に一定以上の電圧がかかると抵抗値が一気に低下し、大電流を流します。
これにより、TVSと同様にサージのエネルギーを吸収して保護することができます。
バリスタは双方向TVSと同じような電流・電圧特性を示します。
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