カップリングコンデンサの仕組みと役割
カップリングコンデンサとは、直流を通さず、交流だけを通過させ取り出す目的で使われるコンデンサです。
入力と出力の間に直列に挿入して使われます。
日本語で「結合コンデンサ」と呼ばれる場合もあります。
カップリングコンデンサを使用する目的
カップリングコンデンサは、入力信号からDC成分(直流成分)を除去することができます。
簡単な回路でシミュレーションしてみましょう。
入力信号は2.5Vを中心に±2.5Vの振幅を持ったサイン波です。
カップリングコンデンサを通すと、中心電圧の2.5Vは無視され、±2.5Vの振幅だけが出力側へ伝わります。
出力側の基準はGND(=0V)ですので、出力電圧波形は0V中心で±2.5Vの振幅が現れます。
出力側の基準を-2.5Vにすれば、出力電圧波形は-2.5V±2.5Vの波形となります。
このように、カップリングコンデンサを使うことで振幅はそのままに中心電圧のレベルシフトを行うことができるのです。
したがって、動作電圧範囲が異なるブロックに交流信号を入力する際に使われます。
カップリングコンデンサの仕組みと原理
コンデンサは、印加されている変圧に変化がある場合には電流が流れ、電圧が一定の場合は電流が流れません。
下記の回路図でシミュレーションをしてみます。
VCの電圧が上昇し続けて、電圧の変化がある領域では電流が流れていますが、電圧が一定になった領域では電流が流れていないことが分かります。
つまり、常に電圧が変動している交流(AC)の場合は電流が流れ続け、電圧が一定である直流(DC)では電流が流れないということになります。
交流電圧を印加した場合のコンデンサ電流を確認してみると以下のようになります。
※電圧と電流の位相ずれについては、コンデンサのインピーダンスの考え方を学ぶと理解できます。
電圧が変動すると電界も変動するため、磁界が変動します。
磁界の変動は電流の変動と等価と考えることができるため、この電流を「変位電流」と定義して、コンデンサ内に電流が流れていると考えます。
これにより、導体中を流れる伝導電流と変位電流は連続して流れているように扱うことができます。
コンデンサが交流成分だけを通過させることは分かりましたが、それでは出力側のDC電圧はどのようにして決まるのでしょうか?
前項の回路でもう一度考えます。
入力側の初期値は2.5Vで、出力側は0Vになります。
コンデンサの両端にかかる電位差は2.5Vとなり、コンデンサ容量を0.1uFとすると、Q=CVより0.25uQの電荷が溜まっていることとなります。
出力側の負荷抵抗値が十分大きいと仮定して放電電流を無視できるとすると、電荷量:Qは保持されます。
電荷量が保持されているため、コンデンサ両端の電位差も変化しないということになります。
この状態で、入力が2.5V⇒5Vまで上昇すると、電位差を保持しているため出力側も0V⇒2.5Vと、同じ電圧幅で変化します。
したがって、出力側のDC電圧は、初期状態で決まることになります。
初期条件を任意の値に設定するためには、下記のような回路が用いられます。
R1とR2の抵抗分割値により初期値(中心電圧)を自由に設定することができます。
R1=200kΩ、R2=300kΩの条件でシミュレーションを行った結果を示します。
カップリングコンデンサの用途
これまでに、カップリングコンデンサには信号のDC成分を遮断するという役割があり、交流信号のレベルシフトのために使われることを説明してきました。
カップリングコンデンサは直流回路でも様々な用途で使用されています。
チャージポンプ
カップリングコンデンサを使って出力電圧を電源電圧以上に昇圧する回路です。
ブートストラップ
Nch MOSをハイサイドに使ってもフルオンさせるためにゲート電圧を昇圧する回路です。
ブートストラップもカップリングコンデンサで電源電圧以上に昇圧することができます。
SEPIC
フライバックコンバータの1次側と2次側をカップリングコンデンサで接続することで、非絶縁で昇降圧可能なスイッチングレギュレータを構成できます。
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