ゲートドライバとは?ICの使い方、内部回路について解説
ゲートドライバとは、MOSFETやIGBTの駆動制御を行うための回路です。
MOSFETやIGBTのゲート電圧を制御することで、オン・オフの切り替えを行います。
ゲートドライバICは、マイコンなどからの制御信号を受け増幅して出力する回路を統合したものです。
本稿では、ゲートドライバICの使い方や、その内部回路について解説していきます。
ゲートドライバの基本回路構成
ゲートドライバは、トランジスタのプッシュプル回路で構成されます。
エミッタフォロワ型のものもありますが、ゲートドライバICとしてはソース接地(又はエミッタ接地)型の方が多いでしょう。
ソース接地型は、貫通対策が必要というデメリットがありますが、出力電圧が電源電圧からGNDレベルの範囲で出力できるというメリットが大きいため採用される場合が多くなります。
大電流を流す必要がある負荷を駆動する場合には、駆動するFETのサイズも大きくなります。
FETのサイズが大きいほどゲートに寄生する容量が大きくなるため、オン・オフの遷移時間を短くするためには大きな電流でゲートをドライブする必要があります。
これがゲートドライバ回路が必要になる理由です。
ゲートドライバICの使い方、選び方
ゲートドライバICを使った代表的なブロック図を示します。
ゲートドライバICには、基本となるドライブ回路以外にUVLO、過熱保護、過電圧保護、過電流保護などの保護機能が搭載されているものもあります。
ゲートドライバICを選ぶ上で最も重要なスペックが、ソース電流能力とシンク電流能力です。
これらは電流値で規定されることが多いですが、出力段のMOSFETのオン抵抗で規定されている場合もあります。
電流能力が分かれば、駆動対象となるMOSFETやIGBTのゲート容量からどれくらいの速度でオン・オフの切り替えができるかを見積もることができます。
また、NchのMOSFETをハイサイドで駆動する場合は、チャージポンプ回路、またはブートストラップ回路が内蔵されているか確認する必要があります。
ゲートドライバ回路の設計計算
ゲートドライバ回路の設計計算の手順は以下の通りです。
- MOSFETのゲート容量を確認する
- ゲートドライバの電流能力を確認する
- 遷移時間を計算し、目標値以内か確認する
例として、下図のような回路を考えます。
この回路でMOSFETのオン動作をシミュレーションしてみます。
簡単のため、ドライブ電流:Idrvは垂直に立ち上がっている波形としています。
ゲートドライバの出力がHiとなり電流をソースすると、T1の領域ではゲート容量:C1、C2を充電します。
CV=Itの計算式より、
と計算できます。
この領域でVD電圧が持ち上がっているのは、C1によるカップリングによる影響です。
MOSFETのオン閾値:VTHにゲート電圧が達すると、MOSFETがオンします。
MOSFETはC1を介してゲート電圧を引き下げようとするため、C1によって負帰還のループができますので、VGがVTHに保たれたままになります。
IdrvはC1、MOSFETを介してGNDへ流れます。
したがって、VD電圧はIdrvとC1で決まる時間で低下しますので、T2は
と計算できます。
VDがGNDまで低下すると、VD電圧は0Vに固定されるため、VGは再びIdrvで充電されます。
充電時間:T3は
と計算されます。